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Channel: ひょんなことから国立大学助教授になった加藤雄一郎の奮闘記
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西尾プロジェクト(第1回PDCA、全3回)

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第1回ワークセッション: 自分たちの事業が目指す社会の理想

【概要】 第1回の目的は、とにかく頭を柔らかくして、目線を高くすること。第1回は何も難しいことをしません。普段の業務を離れ、経営者の目線から自分たちの会社が見ているべき大きな潮流を整理します。

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Step1) 事業を通じて実現する社会の理想

まず、事業を通じて実現する社会の理想では、Beニーズ-Doニーズ-Haveニーズという「ニーズ三層構造」の観点から、自分たちの事業が目指す社会のBeニーズを設定します。「これこれこういう人々が」「地域が」「○○産業界が」といった言葉を主語に置き、そのような主語にどう在ってほしいのかという問いの答えを文章表現します。よくありがちな企業広告に「社会の発展に貢献する」といった表現が散見されますが、本ワークでは不適です。社会にどういう状態になってほしいのかの言及がないからです。企業は社会の公器である以上、社会に貢献するのは当然です。ことさら言葉で表すまでもありません。本ワークで明文化すべきは、「しかるべきなにがしかの貢献によって、自分たちの事業は“どのような主体に(誰に)”“どう在ってほしいのか”」という問いの答えです。

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Step2) 着目すべきトピックの検討

さきの理想の実現に向けて着眼すべき潮流を検討します。要領としては、PESTの枠組みに即して着眼すべきトピックを洗い出します。トピックとは、文章表現における「主語(主部)」に相当します。一般的なPEST分析では、「労働人口不足の対応」、「健康寿命」、「TPPに伴う我が国農業の競争力低下」、「非正規社員の増大」、「数億の機器が相互接続されるIoTの活用」、「グローバルな水平分業」、「3Dプリンタの活用」、「ウェアラブル端末の普及」、「ドローンを用いた遠隔操作」、「ビッグデータに基づくシステム管理」などが挙げられますが、本Stepの狙いは、それらすべてをリストアップすることではなく、理想の実現に向けて当該事業が着眼すべきトピックをピックアップすることです。リストアップされたトピックが多岐にわたる場合は、ハイライト法を用いてトピックを取捨選択します。

なお、「それらの各トピックがどうあるべきなのか?」、「自分たちの事業は、それらの各トピックをどうすべきか?」については第2回で検討します。第1回はあくまでトピックの取捨選択に留めます。その理由は、自分たちの素性が再定義されていない状況で各トピックの在るべき姿を検討しても、月並みな一般表現に留まる可能性が極めて高いからです。

<注> 検討者がパーツメーカーなどの場合、理想の実現に参画する主体を「共創パートナー」としてすべてリストアップしてから、これらの共創パートナー連合が中長期的に遭遇する潮流を考えることを推奨します。その際、単に業界名を挙げるのではなく、具体的な企業名を挙げて「共創パートナー連合」として仮想してみてください。潮流キーワードの検討中に、必要に応じて共創連合のメンバーを再構成する場合があります。

【第2回ワークセッションに向けた宿題】
以上の2つのステップを通じて、第1回ワークセッションでは「自分たちが目指す社会の理想」と「理想の実現に向けて、自分たちが着眼すべきトピック」がセットされたことになります。第2回ワークセッションまでの宿題として、100本ノックが課せられます。100本ノックのお題は、「リストアップされたトピックに対して、私たちは何をできるか?」です。「自分たちは何者か?」「自分たちは何をする集団か?」という抽象的な問いに対して、自由に100個を各人が回答する課題です。(1)既存製品の機能および機能バラシ、(2)保有する生産技術の転用や応用、(3)既存製品に使用する材料や原料の特性を活かした転用や応用、という各視点から自分たちに何ができるかを自由に発想します。

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第2回ワークセッション: バックキャスティング思考の準備

【概要】 ここまでのところで、究極的なゴールとしての「事業が目指す社会の理想」が高く掲げられ、その手元には「(1)自分たちが着眼すべきトピック集」と「(2)自分たちは何をする者ぞ?という問いに対する回答集」があります。これらを材料にして、第2回ワークセッションではマインドマップを用いて、「自分たちが達成すべき課題」と「その課題を達成するアプローチ」を具体的に検討します。第1回ワークセッションでは、PESTの枠組みに即して自分たちの事業が着眼すべきトピックを選定しました。第2回ワークセッションでは、それらの各トピックが自分たちの事業から見てどうあるべきなのか、また、それらの各トピックを自分たちはどうすべきかというメインアイディアを検討します。トピックは文章表現における主語に相当するのに対し、メインアイディアは述語に相当します。「トピック(=何が)」と「メインアイディア(=どうだ)」という組合せをトピックセンテンスといいます。〔トピックセンテンス=トピック+メインアイディア〕です。

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Step3) マインドマップを用いたPEST分析

当該Stepでは、個々のトピックを自分たちの事業としてどうするのかを検討します。その際、宿題として課せられた100本ノック回答を適宜用いて、マインドマップ上でトピックセンテンスを作っていきます。

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Step4) 「自分たちが達成すべき課題」と「その課題を達成するアプローチ」の設定

前Stepで作成したマインドマップにタイトルをつけます。タイトルとして記すべきは、「自分たちが達成すべき課題は何か」と「その課題をどのような切り口から達成するのか」の2点です。この検討結果はいわば、CSV(Creating Shared Value)を定めることそのものといえます。

【第3回ワークセッションに向けた宿題】
マインドマップにつけられたタイトルに基づき、課題達成策としての新製品・新サービスを一人当たり3つ考案することが課せられます。

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第3回ワークセッション: 儲け続ける仕組みづくりの構想

【概要】 1st PDCAを締めくくる第3回は、メンバー各人が宿題として取り組んだ新製品・サービスのアイディア紹介から始めます。その中から特定のアイディアを選択して、そのアイディアを核に当該事業が対価を得続けるストーリーを4コマの小噺にします。ここで注意すべきは、「そのアイディアのみで事業が対価を得るストーリー」ではなく、「そのアイディアを核に、それ以外のアイディアを追加して当該事業が対価が大きくなっていくストーリー」です。顧客シェア向上という視点が非常に重要になります。利益獲得アプローチとして小噺化すべきは、特定のある商材をとっかかりに、顧客シェアを高め、そして市場シェアを高める一連のストーリーということになります。
1st PDCAでアイディア出しするのはここまでです。本件は、一通りの流れを何度も繰り返し実施することをお勧めします。その最大の理由は、思考停止の回避です。私たち日本人は世界の中でも「失敗したくない症候群」が顕著で、正解を求めるあまりに、思考停止しがちなことが報告されています。各ステップを着実に遂行していくことに重きを置き過ぎると、本件のような創造的思考プロセスは推進力を失う恐れがあります。まずは、大雑把に一通りをなぞってみる。それをやってみた所感をメンバー相互に共有し、さらに深掘りすべき事項を定める。そのような検討を経て、粒度を細かくした2nd PDCAに取り組むことを推奨します。2nd PDCAでは新たに、共創プロセス(文脈価値達成ストーリー)が登場します。お楽しみに。

Step5) 導出された財アイディアの紹介
Step6) 利益獲得アプローチとして小噺化
Step7) 戦略的意思決定項目の検討

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