出典:
木村達也 「インターナル・マーケティング」
ところが副社長には、各部門に対して何の権限もない。機内食部門は食事コストを抑えた食材を選ぶ。メンテナンス部門は清掃コストを抑えた清掃業者を使う。人事部はサービス精神旺盛な人物かどうかを考えずに社員を採用する。航空チケット料金を設定するのは財務部門である。このような部門は概してコストや製品を中心にした視点に立つので、マーケティング担当副社長による統合型マーケティング・ミックスは挫折するのである。
Kotler,2000 邦訳pp.30
組織として統合的なマーケティングが必要だ。しかし、実際には大半の企業が実践上の課題を抱えている。部門間の利害は決して同一ではなく、仕事を進める上での姿勢や考え方、従業員の特性など多くの点で異なっているために、コーディネーション上の多くの問題が発生している。
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マーケティング・コンセプト実践企業の特性として、
顧客志向の実践とそのためのマーケティング組織の在り方をあげ、
マーケティングに長けた企業はすべからく顧客に焦点を当て、その組織はさまざまに変化する顧客ニーズに対して適切かつ効果的に対応できるように設計されている。こうした企業では、研究開発や生産、財務、人事、購買部門など社内のすべての部門が顧客こそ第1というコンセプトのもとで働いている。
統合的なマーケティングの実現には3つの条件がある
(1) マーケティング部門内の諸機能の統合
(2) マーケティング部門以外の部門がマーケティング発想で考えることの必要性、
(3) マーケティング部門とそれら他部門との間に良好な連携が図られていること
マーケティングの機能が適切に発揮されるためには、企業のあらゆる部門が顧客への価値提供のために協力し合うことが求められる。
企業の構成員すべてが、顧客の満足に対して責任を負っているのである。すなわち、顧客の代弁者としてあらゆるプロセスに焦点をあてるという意識をもたなければならない。
インターナル・マーケティングの重要な目的の一つは、
マーケティング部門以外の部門にマーケティング発想を持つように働きかけ、
組織全体の統合を図るようコーディネーションを行うことである。
インターナル・マーケティングの定義は、四半世紀ほど前よりマーケティングの文献に登場してきた。当初は、顧客と直接接するサービス業の従業員の動機づけの為の方策として定義づけられていた。次第に、組織的な有効性の向上や、経営上の計画を計画的に実行するためのプロセスの一つと考えられるようになり、やがて、組織の市場におけるパフォーマンスの為に必要とされる組織内部の活動と捉えられるようになってきた。
90年代以降、インターナル・マーケティングに求められる役割は、
顧客との接点(フロントライン)にいる従業員に対する組織からの働きかけという活動に留まらず、その組織が市場で高い成果を実現するための一連の組織内活動と位置付けられるようになった。