【知識創造型の人事制度】
成果主義の是非や結果を追い求めることの是非が云々されるが、成果主義は当たり前であり、そうした議論は意味がないように思われる。できる人材を採用し、育て、活用していくことは目的を持った組織であれば当然のことであり、やったことを「誉める」ことも成果主義の一つだからだ。人が育つには、暖かさだけではなく、ストレッチした厳しさも必要であり、「やってもやらなくても同じ」では堕落する。また、結果が大事なのも当たり前。競争に勝つのがビジネスの世界。競争を矮小化するからイメージが悪くなるが、
大きなビジョンを打ち立てれば大きな競争ができるはずだ。逆に競争しない独占や官では人材は育たない。それゆえ、成果に貢献した人材に報いる人事制度はいずれにしても必要であり、成果の認知のしかたが経営目標や組織目的に即した効果を上げるかどうか、また組織構成員が納得するかどうかに議論をフォーカスすべきではないだろうか。
そういう意味では、成果主義をデザインするにあたっては、「人事の制度」という前に、「経営をサポート」し、それに貢献した人材に報いるという原点に立ち返るべきであろう。これからの成果主義は、企業固有の価値を伸ばす人材を評価し、育成・活用する人材活用に重点を置いた仕組みになるだろう。知を創造する人材をどう育て、活用するか。自社固有の価値観、知の体系、夢、強みにフォーカスし、それを学習させ、活用・発展させる「知識創造型人事制度」への転換が必要となろう。
年度始めに年間の目標を設定するような固定焦点方式の目標管理では既に対応できない企業が続出している。トップダウンで割り付ける目標設定では、期中のダイナミックな知の創造が業務に反映されにくくなるとともに、やらされ感が蔓延し、目標の矮小化が起こってくる。設定された目標でしか評価されないのなら、それ以外はやりたくない。納得のいかない目標にはなるだけ目標値を低く設定しようとするのは人間の常だろう。
それゆえ、目標は単に上位目標をブレークダウンするのではなく、上司と部下とが将来の夢や、組織や自社のありたい姿や仕事への思いを話し合い、その中でその年にやるべき課題を設定していく方式が望ましい。このようなやり方を MBB(Management by Belief)と呼ぶ。そこでは、上司も部下も自分の内因的な動機に基づいて、職務分担を解釈し、やるべきことを設定する。新たなタイプの目標管理シート(MBBシート)も作成される。MBBシートでは対話から生み出された職務上のテーマを設定する傍らで、MBBの対話で明らかになる部下本人の思いを受け止める欄が設けられ、そこに決意や思いが書き込まれる。こうして設定された目標は、思いの詰まったものになり、その集積である全社の「目標の体系」は、単なる数値のブレークダウンではなく、全社員の熱い「思いの体系」となっていく。また、これまでは「ハードルが高い」と表現されたストレッチゴールも、「志が高い」目標として当事者意識を持って語られるようになる。MBBを推進し、乾いたMBOとしみじみとするMBBのバランスをとっていくことが必要になる。
(参考文献は、徳岡 晃一郎著「人事異動」新潮新書、OMNI-MANAGEMENT 2005.3)
MBBコンソーシアムで検討を進めてきたMBBシステムの特徴のひとつが、MBBメモ~MBBテーマ、セルフコーチング~コーチングメッセージなどである。 コーチングは、『命令したり、答えを与えたり』するのではなく、相手が自ら『答えを見つけられる』ようにサポートし、相手に問いを投げかけるという、質問型のコミュニケーションによって『自分で考え、自分で行動する』自立・自走型の人材を育てることも目的の一つである。私たちが学ぶ方法は一つしかない、 私たちは行動を通してしか学ぶことはできない。 行動するためには、自分の言葉で考えなければならない。
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【人事の役割3.0】
■人事の役割 1.0 の時代:
「終身雇用」「年功序列」からなる日本型人事・賃金。従業員を“人”基準でとらえてその年齢・能力を年功により画一的に管理し、全員をできるだけ平等にマネージすることを目指す色合いが強かった。
■人事の役割 2.0 の時代
社外競争力強化のためコスト生産性を管理して経営の効率性を高めることにあった。従業員が組織だけでなく仕事に対してコミットする意欲を高め、課題の達成を動機づけ、企業業績の向上につなげる「成果主義」が採用されることになる。
■人事の役割 3.0 の時代
モチベーション3.0のポイントは3つ。キーワードは「自律性」「熟達」「目的」の3つだ。重要なのは、人々を縛るよりも解放すること。時間や場所ではなく、「なぜ働くのか」「なんのために生きるのか」といった目的を共有することにある。MBB(Management by Belief「思いのマネジメント」)を推進することが人事の主要な役割なのである。
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■スターバックスの事例でみる「思いのピラミッド」
MBBは具体的に5層の「思いのピラミッド」で表出化することができる。スターバックスの事例でMBBがいかに実践されたかをみると、同社の拡大主義を憂慮してCEOに復帰したシュルツ氏は、自分が復帰するのは「スターバックスを以前のような輝かしい企業にするためだ」と宣言する。これが「(1)思い」及び「(2)背景」の層にあたる。「(3)ストーリー」は、スターバックスはファストフード店ではないことを本気で示していくこと。「(4)壁」は、コーヒーの香りを台無しにしてしまうサンドイッチの拡販が収益の原動力になっていたことだった。そして、その壁を「(5)突破するポリシー」として、シュルツ氏はサンドイッチの販売から撤退することを決意、一杯のコーヒーを大切にするという原点に返ることを選ぶ。スターバックスはこうして再び「らしさ」を取り戻し、以前にも増して企業価値を高めていったのである。
企業や組織はしっかりとビジョンを見据えて、そこへ社員が自律的に立ち向かえるようにしていかなければならない。MBBは「強い企業文化」を創造する作業といえるのだ。
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本投稿は、「management by belief」をgoogle検索してヒットしたページから引用した情報をもとに構成したものです。出典については、後ほど以下に追記します。