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Channel: ひょんなことから国立大学助教授になった加藤雄一郎の奮闘記
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【組織M論文】 第1章の再構成案

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1 はじめに: 従来型の組織能力に基づく競争力強化の限界と目標創造力を高めることの重要性

<第1段落: 起>

日本の高度成長期と呼ばれた時代、
我が国の製造業が圧倒的な競争力をもち、世界的に揺るぎない存在感を示していた

当時、日本の製造業が高い存在感を維持することができていた理由のひとつに、
持続的な改善活動の取組みが挙げられる。

組織能力を強化する経営手法体系としてのTQC(Total Quality Control: 総合的品質管理)によって
持続的改善の組織的取組みが製造業を中心に産業界に広く浸透した

改善活動の取組みは、問題解決の枠組みに基づき、
既存の製品や製造プロセスが内包する問題の洗い出しと解決が持続的に行われる。
問題とは目標と現状の差異であり、
差異を生じる要因を解明して対策を講じることを問題解決という。

「不良率○%」、「歩留り・・率○%」、「・・・・率○%」などの目標に対して
未達の現状をデータに基づき客観的に把握して、なぜなぜ分析を行うことによって効果的な対策が立案され、成果をものにする持続的改善の取組みが行われた。
高品質と低価格を両立する優れた経営システムを構築した

高度経済成長期の我が国では、
製品の不具合の解消やいまある製品の高性能化・高機能化そのものが顧客からの中心的なニーズであったことから(TQM委員会、1998)、
改善活動の取組みが企業の収益を高めることに直接的に影響を与え、競争力を高めることができていたといえよう。

-----------

<第2段落: 転>

しかし今日では、
・ 各社の持続的改善
・ 各社の技術水準の向上
・ 製品の不具合は減少
・ 性能や機能が顧客の要求を超える過剰品質の問題

・ 市場の成熟化
・ ニーズの多様化
  機能や性能、品質だけで勝てない市場の増大

・ 製品開発におけるモジュール化の進展
  新興企業など参入障壁の低下
  コモディティ化

・ 競争激化
・ 差別的優位性のある製品を生み出しづらい状況

・ 持続的な改善活動を通じて、優れたものを低コストで開発・製造するだけでは、
  競争力を強化し続けていくことは難しくなりつつあることが指摘されている(延岡、2006; 小宮山、2007)。

このような背景を受けて
・・・・<中略>・・・・・
「・・・・・」 という、改善とは異なる新たな価値創造アプローチの重要性が説かれるようになった。

-----------

<第3段落: 結=研究目的>

このような新たな立場は、
これまでの改善活動における目標が「既に在る目標」であるのに対して
「今は無い目標を新たに生み出す」ことに力点を置いている。

従来型の改善活動では、
「不良率」、「歩留り・・率」、「・・・・率」など既に在る達成尺度に対して
しかるべき達成水準値が設定されていた。
企業によって達成尺度は、「管理点」、「・・・・」、「KPI」と呼ばれることもある。

これに対して新しい立場は、
長期的展望から達成すべき達成尺度そのものをゼロから検討することの重要性を説く。
たとえば製品開発において、「●●性」といった既に在る品質要素の達成水準の向上を図るだけに目を奪われるのではなく、
「・・・・(←目的に相当する何かの例)」という点を考慮して、新たに「・・・・」という品質要素を達成尺度として設定した事例が該当する。

昨今の商品開発が、既存尺度の達成水準を高めるに留まる「改善型商品開発」に陥っているという指摘や、
挑戦的な全社方針が設定された場合であっても、そのような全社方針が部・課のレベルに展開されていく過程で、全社方針を達成するに相応しい達成尺度が設定されずに、従来からある既存尺度を偏重した下位部門方針に落とし込まれていく方針間の不整合が指摘されていることから

これからの時代を勝ち抜く競争優位の構築に向けた組織マネジメントに向けて
各部門および従業員一人ひとりが新規目標を生み出す力を高めていく必要性を示唆しているものといえる。

新たな目標を生み出す上で、その上位概念としての目的の重要性が多くの論者によって説かれているが
その一方で、目的から新規目標を生み出す際に伴う困難も指摘されており、
新規目標を生み出すメカニズムは組織マネジメントの実務や研究分野において共通認識としての知見が導出されているといはいえない。

そこで本研究では・・・

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以上のように再構成することを考えたいです。
修正のポイントは以下のとおりです。

(1)冗長な繰り返しを防ぐ

原案は以下のような流れになっています。

-----
改善が功を奏してきた
しかし、これからは改善だけではどうにもならん
改善は問題解決の枠組みの即して行われる
これからは新規目標が重要だ
-----

この流れは、
〔改善→改善じゃない→改善→改善じゃない〕
という、〔改善→改善じゃない〕のサブルーチンを2度繰り返す冗長な流れになっています。

一発で仕留める流れに改めたいと思います。

そのためには、
改善の話が登場する段落で
そのまま、問題解決の枠組みにも触れておくことが対策になります。
上記の再構成案は、第1段落にこれらを落とし込む案です。



(2)「目標」の例を示す

前回までは「目的」の表現例を示すことに重点を置いていましたが
よくよく見てみると、「目標」についても例示が必要だと思われます。

また、終始「目標」という言葉を使うだけでは
執筆者側の目標イメージと、読者側の目標イメージがメンタルモデル上で一致しない恐れがあると予想されることから、

「KPI」や「管理点」、「達成尺度」など
実際に実務家が多用する語と関連付けて本文を書くことが重要だと重れます。



(3)第1章の「研究目的」のデッカイ表現を適切に改める

当初は、「目的の重要性を説く論者は多い」という記述は
第2章冒頭に位置付けられています。
その結果、第1章末尾に記すべき研究目的の記述からは「目的」という言葉が外れ
単に「目標創造のメカニズム」というデッカイ表現になってしまっています。

しかし、この状態では、
「なぜ、目標創造のメカニズムに明らかにするにあたり、目的に着目するのか?」
というルール不在で、第1章から唐突に第2章に入ることになります。

「目的の重要性を説く論者が多い」だけでは、理由になりません。
目標創造メカニズムを明らかにするにあたり、目的に着目する論理的根拠にはなりません。
論者の多さだけいうなら、人事制度や組織マネジメント施策の重要性を説く論者も多いはず。

いまの第1章から第2章の連結は、危険だと思われます。
最終形はさらに作り込みが必要になると思われますが、
ひとまずいまの段階では、
「第2章の冒頭を第1章に移動して、その上で研究目的の記述のバカデッカさを防ぐ」
ということをやってみたいと思います。


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