企画セッション「理念ウェイの浸透と展開」
総合討論の議題候補
1.ビジョンはいかに生まれ、育まれるか
1.1 ビジョンとして何を描くか?
ビジョンというと、企業は自分たちの、自分たちによる、自分たちのための「目指す姿」を描いている場合が散見されます。「地域から必要とされる存在になる」が一例です。
しかし、両社のビジョンは、ビジョンの内容が「自分たち企業側がなりたい姿」ではありません。顧客および社会を真摯に直視したからこそ生み出されたビジョンと映ります。
両者のビジョンは、徹底的な顧客志向に基づき、「顧客が実現したいこと」をビジョンとして組織内外に明示しているといえますか?「ビジョンとは、大切な人の未来像」という言い方はありえますでしょうか?
1.2 ビジョンは、いかにして生まれたか?
現在のビジョンに至った経緯についてお伺いいたします。両社のビジョンは、競合ベンチマーキングや一般的な市場調査を通じて生まれたものとは到底思えません。分析を通じて、「ビジョンはこれだ!」と導出されたものではないと思われます。
両社のビジョンは、いかにして生まれたのでしょうか?自らの中にある強い思いや願いが、ビジョンとして表出したものなのでしょうか?あるいは、顧客と向き合っている中で、事業側が何かを感じ始め、芽生えたものなのでしょうか?
1.3 ビジョンを、いかに組織全体で育むか?
両社のビジョンは、いかにして生まれたのでしょうか?自らの中にある強い思いや願いが、ビジョンとして表出したものなのでしょうか?あるいは、顧客と向き合っている中で、事業側が何かを感じ始め、芽生えたものなのでしょうか?
1.3 ビジョンを、いかに組織全体で育むか?
Googleやスターバックスのように創業時からビジョンがあったのなら、そのビジョンに共感して入社する社員が多いと思われます。組織全体でビジョンを共有することは比較的容易なのかもしれません。
しかし、両社のような歴史が長く、大規模組織の場合、あとから生まれたビジョンが組織全体で共有されることは簡単なことではありません。
なぜ、両社はこれほどの新規なコンセプトを組織全体で浸透することができたのでしょうか?組織への浸透を促進する鍵として、どのような点が挙げられますか?
2.ビジョンが顧客にもたらす効果
2.1 製品レベルと企業レベルに続く、第3のブランディング
今回ご紹介いただいた両社のビジョンの特筆すべき点として、そのビジョンを実現するための手段としての複数の商品(ハード・ソフト)を束ねた価値ラベルとしての役割を担っている印象を受けます。
一般的にブランドマネジメントというと、「製品レベル」と「企業レベル」に大別されますが、両社の事例はその中間の「カテゴリ/ドメイン」といえるレベルでビジョンを定めたと解釈することができます。
両社は、複数の商品を束ねる傘としての位置づけを当初から狙ったものなのでしょうか?あるいは、さまざまなトライをしているうちに、いつしか傘としての位置づけになったのでしょうか?
2.2 ビジョンが顧客にもたらす効果1)期待喚起
両社は、ビジョンを実現するための手段としての製品・サービスが時間とともに増え続けています。
顧客からみたビジョンは「このブランドによって、自分に何がもたらされるのか」が示されたものであり、顧客がそのブランドと付き合い続けることで、そのビジョンを実現する手段としてのハード・ソフトが新たに生まれてくることへの『期待喚起の源』となるといえますか?
2.3 ビジョンが顧客にもたらす効果2) 目的共有と価値共創
今日は価値共創の時代と言われています。
価値を共創するには、価値を実現する道具としてのハード・ソフトの開発だけでなく、ハード・ソフトを使いこなすノウハウの開発も必要です。これら2タイプの開発に、顧客の協力が欠かせません。
ビジョンは、事業者と顧客が共有する目的という言い方はありえますでしょうか?
そして、共通の目的を実現するために、双方のアイディアや知識・スキルを引き出すドライバになりえるのでしょうか?
3.ビジョンが組織内部にもたらす効果
価値を共創するには、価値を実現する道具としてのハード・ソフトの開発だけでなく、ハード・ソフトを使いこなすノウハウの開発も必要です。これら2タイプの開発に、顧客の協力が欠かせません。
ビジョンは、事業者と顧客が共有する目的という言い方はありえますでしょうか?
そして、共通の目的を実現するために、双方のアイディアや知識・スキルを引き出すドライバになりえるのでしょうか?
3.ビジョンが組織内部にもたらす効果
3.1 ビジョンは、VOCとの向き合い方を変えるか?
日本企業は、「困り事の解決」に目が奪われる傾向があり、「新しい喜び事の創造」は不得手という指摘があります。また、目の当たりにした情報を解釈することも不得手で、「顧客の声を真に受けて、顧客の言及をそのまま「顧客ニーズ」とみなしてしまう傾向があるという指摘もあります。
しかし、両社のケースは、「既存の顕在化した不具合の解決」という次元を超越し、顧客の声の背後にある潜在ニーズを見事に捉えている印象があります。顧客の声を解釈する力、顧客の声を読み替える力は、ビジョンがあればこそといえますか?強い目的意識として顕在化しているゆえに目の当たりにした情報をビジョンに即して読み替えることを可能にしていると言えるのでしょうか?
つまり、ビジョンは、いまはない新しいニーズの発掘力を高めるといえますか?
ビジョンは、顧客の声を解釈する力を高めるのでしょうか?
3.2 ビジョンは、新商品をひらめく源になるか?
企業からみたビジョンは「そのビジョンを実現しようとすれば、こんな新製品やこんな新サービスが価値実現手段として必要だ」という、ひらめきの源になりえると思います。
実際、ビジョンが明確に定められた現在は、かつてと比較して商品の企画・開発などのプロセスにおいて、どのような良好な変化が生じましたか?
3.3 ビジョンは、従業員各人の知見を活かした事業モデル全体の革新をもたらすか
「ビジネスの変革には、トップのリーダーシップが必要だ」と言われます。しかし、トップのリーダーシップが強すぎると、下の人間は指示待ちになるという指摘もあります。
コマツではBM活動という組織横断的な取組みがグローバルに展開されています。「BM活動とは、明日の地平を切り拓く取組み」と言われています。活動では、組織オペレーション全体に関わる提言や、新たに目指すべき事業モデルに関する提言もあり、提言レベルが高次のものが少なくありません。
今回のご講演で「ビジョンがもたらす新たな全員参加型経営」にサブタイルに記されていますが、この真意は、「トップのリーダーシップは無論重要であるが、トップの最も重要な仕事は「決断」であり、決断の対象となる「選択肢」もすべてトップが担う必要はない。これからのビジネスがどうあるべきかに関する知見は、顧客と向き合う現場に宝のように存在する。そのような現場の知見を、明日の事業に活かすことがこれからの時代を生きる企業に必要だ」というメッセージが込められているのでしょうか?
つまり、「従業員各人の知見を活かす」とは、これまでのような「職場改善など所属部門の業務レベル」に留まらず、「事業モデルのレベル」まで広げていくことが重要だといえるのでしょうか?
3.4 ビジョンは、数字データに代わる採否判断基準になりうるか?【★】
市場を創造するには、すぐに結果が出ず、長い時間を要する場合が多いと思われます。「やってみて結果が出なければすぐやめる」を繰り返して実を結ばない事業開発事例が多数存在します。
また、すでに顕在化したニーズを満たす商材であれば市場性を推定することができますが、いまはまだ市場に存在しないウォンツを発掘しようという場合、市場性を客観的なデータで証明することは至難の業だと思います。コンセプトの新規性の高さゆえに、「そのコンセプトで、当事業はどれくらい儲かるのか?市場性を裏付けるデータはあるのか?」というネガティブな反応と向き合うことに耐えなければならない局面が多々あった思います。
なぜ、両社はこれだけ斬新なハード・ソフトを市場に送り出すことができたのでしょうか?
「トライした結果を評価する時の拠り所」、「次の一手を考案する時の拠り所」、「考案された次の一手の採否判断する時の拠り所」として、ビジョンは時として「数字データの裏付け」にとって代わる意思決定の拠り所になりうるものなのでしょうか?
3.5 ビジョンは働き甲斐
「何のために働くか?」という働く理由について、D. Pinkは「かつての生存や損得が理由になっていた時代はいま、人々は目的・意義のために働く」というモチベーション3.0を提唱しています。両社のビジョン内容は、「新製品・サービスを発想する源」としての役割に留まらず、社会的意義に溢れた内容になっていることから、両社のビジョンは従業員のモチベーションや仕事に向き合う姿勢にも好影響を及ぼしているのではないでしょうか?
辞書で「甲斐」を調べると、「動詞の連用形や動作性の名詞などに付いて、その行為をした効果・効験の意を表す。「生き甲斐」「働き甲斐」」「動詞、またはそれに使役・受け身の助動詞の付いたものの連用形に付いて、その行為の結果としての効果・価値・張り合いなどの意を表す。 「頼み-」 「苦労のし-」 「生き-」」と記されています。
ビジョンは、組織内部に対して「働き甲斐(この事業に関わる人間として働くことの意味)」、組織外部の顧客に対して「付き合い甲斐(このブランドと関係性を続けることの意味)」をもたらすといえるのでしょうか?
ここでは特に、ビジョンが組織内部の人間にもたらす効果に焦点を当てて考えてみたいと思います。よろしければ、従業員個人の考えや行動などに起きた変化について、お聞かせください。