Quantcast
Channel: ひょんなことから国立大学助教授になった加藤雄一郎の奮闘記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3957

昨年一年間で集めたお題は、15個。すべてトライ&エラーの対象。

$
0
0
(1) 「個人的意図」を「組織的意図」に変換

あの案件は、大切なことを教えてくれました。
プロジェクトを指揮してきた上級管理職が突然に交代。
新任者になり、ほどなくしてプロジェクトは終焉しました。
理由は説明されませんでした。

権限をもった上級職の意思決定は、
個人的意思決定を組織的意思決定に変えておかなければならない。
そうでなければ、新任者による前任者否定に巻き込まれてしまう。

単に「ある人の個人的な意図」を「その部門の意図」に変換するということなら、その部門だけをおさえればいいのかもしれないが、部門をまたぐ全社的な意図ということになると難易度は飛躍的に高まる。

部門間には往々にして利害の不一致が存在する。
いかに利害の一致を図るか。
共通目標のもとで利害が一致するシナリオを示せるかどうかにかかっている。

戦略と集中、そしてストーリー。

押すべきボタンを押さなかったことによって破綻した苦い経験。
鍵は
(1)押すべきボタンのラインナップと
(2)押していく順番

マネタイズ・シナリオは
上記(1)と(2)をまとめあげた図面である
という捉え方がありうる。

「個人的な意図」を「組織的な意図」に変換することの担い手は誰か?
方や提案する側、方や提案される側という2社間取引の場合、
クライアント企業における、個人的意図の組織的意図化は、営業(アカウント・プランナー)の仕事

------

(2) 課題のスケールが小さい。あるいは、過度に抽象的。

達成すべき目標(What)が自明だったかつての時代、
課題の多くは、実現方法(How)にあった。
所在は、「技術的課題」にあった。

各社の技術水準が向上。モジュール化が進展。
そこへ、CSV(共通価値の創造)。
所在は、「技術的課題」から「社会的課題」にシフト。

花火マップの最外周に
「いかにIoT社会に対応するか」
といった本来手段であるべき事柄が目的化したかのような課題が挙がることが非常に気になる。

あるいは、
最外周で導出される課題のスケールが小さい。

「論理を重視すると思考が小さくなる。だから、いまの時代は、物語だ」
という主張があるが、これは明らかに論理の飛躍。

推論結果のスケールが大きくなるか小さくなるかは、
論理のせいではなく、推論時に用いるルール(演繹推論ルール)の問題。

推論する本人が
自分が見えている世界のなかで、自部門起点のルールを適応すれば
推論結果のスケールが小さくなるのは至極当然。

論理的に考えること自体が思考を小さくするのではない。
考える際に用いる演繹推論ルールがショボいから思考が小さくなるのではないか?

論理的に思考すること自体は否定されることではなく、
「推論時に適用されるルールの質」を問題視すべき。

前述の主張が、
「スケールの大きなルールを引き出すために物語を重視する」というなら分かる。
その場合、「論理的思考を小さくしないための、物語重視」ということになると思われる。

ここでいう物語というのは、「ビジョン(事業を通じて目指す理想)」が相当するといえるなら、企業広告で散見されるビッグワード系の言葉ではなく、「絵として表した顧客の理想」を推論する際の拠り所として大事にしたい。2008年に池田と奈良と編み出した価値創出ロジックの重要性がいまあらためて認められる。

論理を小さくしないための物語というのは、つまりビジョン。
環境規定の考え方を用いて、登場人物のラインナップと各主体の関係を定め、その上で花火マップを実行してみたい。それでもなお、最外周にプロットされる課題のスケールが小さい場合はもちろん再検討。

------

(3) 既存の重点実施項目の踏襲をいかにあらためるか

昨年3月のWSにおいて、「せっかくHSJを作ったのに、重点実施項目が従来型のまま」と嘆いた場面があった。

最も丁寧な解決策として
1. HSJ → 2. カスタマ・ジャーニー → 3. 顧客Doと自社Doの検討 → 4. 自社Doを相互に結んだ活動システム → 5. 脆弱性が存在する領域をゾーニング → 6. 各ゾーンにイシューを立てる → 7. 重点実施項目
という手順を踏んだ。

最大のポイントは、
5. 脆弱性が存在する領域をゾーニング

「脆弱箇所(点)」というより、
「脆弱領域(範囲)」に着目していること。

組織開発とは
たとえていうと、体を巡る「血流」をよくすること。
「流れ」を扱う以上、問題の指摘は「AからBに至る流れ」という言い方になると想定される。
「点」ではなく、「領域・範囲」になることは至って自然。

------

(4) 全員参加型の持続的改善活動の新たな視点

活動システムが
全社的に共有された上で、

各部門が、
現状の活動システムにおける
(1) 特定要素の弱さ、あるいは
(2) 要素間のつながりの悪さ
に意識的になる。

その上で
「活動システムにおける此処に、こういう要素を新たに組み込むことによって、これだけ血流がよくなるはずだ。ほら、これだけよくなりましたよ!」と継続的にPDCAする。

これこそが、
ビジネスモデルで先行し、
現場勝負に持ち込む全員参加型経営
といえるのではないだろうか。

------

(5) イシュー集の独り歩きを防ぐ

せっかく活動システムをもとにイシュー集を策定したのに、ある人が活動システムそっちのけで、イシュー集の特定箇所の文字面に引きずられた発言をしていたことが大変気になりました。ただし、これは「その人」の問題ではなく、得てしてそういうことが生じやすいぞ!という警鐘に違いないと受け止めました。つまり、イシュー集が単独で社内を独り歩きすると相変わらず局所最適な議論に陥る恐れがあるということ。

局所最適の話に陥ることを回避する鍵は何だろう?
「活動システム」と「イシュー集」を全員がセットにして扱うことが肝要なのではないかしら?

検討に関わる全員が、
左手に「活動システム図」を、右手に「イシュー集」を持って議論する。
「活動システム図」と「イシュー集」を必ずセットにして、全体像をもって議論することが極めて重要なのではないだろうか?

------

(6) 「生活技能の創造」という発想

科学とは、物事の原理・原則。
技術とは、原理・原則に基づき、物事を扱う方法。
技能とは、方法を使いこなす腕前。

ということは、技能とは「行為」。
ん? Do??
サービス・ドミナント・ロジックの匂いがします。

技能という言葉を用いて
Doニーズを説明し直すと、
「新たなDoニーズの創造」というのは、
B2Cの場合、「新たな生活技能の創造」であり
B2Bの場合、「業務上の技能の創造」という言い方がならないか??

たとえば、
クイックルワイパーは、掃除技能の向上をもたらした
クックドゥは、料理技能を創造した
コムコネクトは、施工管理技能を飛躍的に高めた

Doニーズとは、
技能の向上、技能の創造なのか?
上記の例はいずれも、生活上あるいは業務上の腕前を高めている。

考えてみると、
職務分掌って、
技能をレベル分け表現したものといえるのではないだろうか?

------

(7) 「顧客の品質保証体系を創る」という発想

品質保証体系の構築というと
自社の品質保証体系のことを考えると思いますが
自社の品質保証体系ではなく、顧客の品質保証体系の話。

実際、K社やKo社の事例は、
まさに、顧客の品質保証体系を創造した事例。
しかも、デジタルの力で抜本的に再構築したデジタライゼーションの象徴的事例といえそう。
B2Bだけでなく、B2Cも思いっきり該当すると思う。ぜひ、そのことを示してみたいです。

B2Cにおける顧客の品質保証体系とは、
「生活運営プロセス体系」といえるのかしら?

競合製品との仕様差別化に明け暮れる
散発的な製品提供はもういいでしょう。
それでもたらされる競争優位は持続しないのだから。

ハードとソフトの組み合わせで
大切な相手のオペレーションシステムを
どれだけ有意義なものにするか。
そして、中長期的展望に立って、いかにそのシステムの持続的進化に寄り添うか。
それが本物のソリューションビジネスに違いないと思います。

デジタライゼーション、またの名はデジタルトランスフォーメーション。それは、デジタル導入によって、QA体系を抜本的に再構築することを言うんだ!と証明してみせたいです。

------

(8) 「ジョブにジョブで応える」という発想

すこしでも注意を怠ると、
すぐにHaveニーズ議論になる。

ジョブ理論の登場は非常に大きい。
手法として、業務機能展開表が有用。

顧客のジョブを、1次Do→2次Do→3次Doと展開していくと、
どこかのタイミングで、あるDoの担い手が、顧客から顧客以外に移しても構わなくなることに気づく。

単に「移しても構わない」という程度では大した対価を生まないが、「別の主体に担い手を移したほうが、顧客のジョブはもっと効果・効率的に達成できる」といえるようなDoを発見し、それを自社が担うことができれば大きな対価を生む可能性が高い。

昔、おもてなしの本を興味深く読みました。
Doニーズという言葉を使って言い換えると、
「おもてなしとは、お客さまのDoニーズが満たされるように先回りしてこちらがDoを施すこと」と言えそうです。

この発想が、
シートの左半分に顧客Do、
シートの右半分に当社Do。
両者は密接に関わり、「こちらが何をすれば、顧客は何をできるようになるか?その上で更にこちらが何をすれば、顧客は次に何をできるようになるか?」という双方のDoが因果関係で結ばれた活動システムになる。
という考え方に至らしめたのですが、

こちら側が施すDoには、
対価をいただける「有償Do」と
それそのものは対価ゼロの「無償Do」がある。

有償Doだけを引っ張り出して
繰り出す順番を表せば、それがマネタイズ・シナリオになる。

マネタイズシナリオは、
HSJからダイレクトに生まれるのではない。
ジョブ(Do)を展開して、当社が担う有償Doを抜き出し、
それら有償Doを繰り出す順番を考えた結果が、マネタイズシナリオになる。

ジョブを単に展開するに留まらず、展開されたジョブの担い手が移行する様子も視野に入れた「亀の井モデル」の確立を急ぎたい。

------

(9) サービス・ドミナント・ロジック(SDロジック)の考え方に基づく品質保証システムの構築

現状の品質保証システムが保証しているのは「モノ」。
モノの設計、モノの出来栄え、モノの耐久性や信頼性を確保するためのシステム。

SDロジックにおいて
価値は製品に具備されていない。
製品は、あくまで価値を実現するための手段。
道具をいかにうまく使いこなすかによって創造される価値は異なる。

「モノづくりからコトづくりへ」に向き合うなら、
モノの保証だけでなく、コトの保証に着手する必要がある。

これまでの品質保証システムが『顧客のHaveニーズ』に対応するものであるのに対して、これからの品質保証システムは『顧客のDoニーズ』に対応するもの。「製造業のサービス化」「ソリューション提供型ビジネスの構築」をサポートするために、サービス・ドミナント・ロジック(SDロジック)の考え方に基づく品質保証システムの構築に関する知見を蓄積したいです。

------

(10) 究極のBeニーズ

自己有能感。
自己肯定感。
承認欲求。

いろいろな言い方がありますが、
とどのつまり、
究極のBeニーズは
「必要とされる存在になりたい」
なのではないか。それは、B2Bだろうと、B2Cだろうと同じなのではないだろうか。

それは、
世界のどの地域が取り組んでも、顧客関係性相関チャートにおける「ビジョン」の記載内容がほとんど同じことが証明しているのではないか。

昨年末に「陸王」の再放送を観ていて
ふとそんな気がしました。

そういえば
昨年にドライブ中に聞いていたJ-WAVEで
「人間の脳にとって何が一番幸せか」について、ドイツのマックス・プランク研究所の「苦しんでいる人に寄り添って支援するときに脳は幸せを感じる」という提言に興奮したことを思い出しました。

B2B・B2Cを問わず
「必要とされる存在になる」は
普遍的なBeニーズなのではないだろうか??

たとえば、昨年にある組織で
「働く未来像を自ら選択し、充実した職業人生を送る」というブランドプロポジションを検討しました。

「人の成長にコミットする」
「『その世界に触れてみたい』という知的好奇心を優しく迎えてあげることができる存在になりたい」
という旗も、「必要とされる存在になりたい」という根底からにじみ出たコンセプトといえるのではないだろうか。

------

(11) 長期的展望と短期的成果の両立。

策定された事業構想が、現状のビジネスを変革する程度が大きいほど、組織的な抵抗に遭う。
HSJの書き込み順は、J→H→S。
H→S→Jではない。

------

(12) ビジネス・エコ・システムの構築

「コンセプト主導型オープンイノベーション」を掲げて3年の月日が経ちます。
トライしているけど、いまはまだ道半ば。

いままでのような
たった3回シリーズのWSでは検討時間が足りなさすぎる。

今年はもっと長尺にして
「各主体が保有するシーズを持ち寄って、社会的課題を解決する」
という議論を業種横断でやってみたい!

------

(13) 「活動システム内Do」と「活動計画Do」を混同してはならん!

昨年、
自社Doの検討場面で
どのWSでもある不具合が百発百中で起きました。

それは、
「活動システム内Do」と「そのような活動システムを構築するための活計Do」の混同です。

この不具合は、「品質保証体系図(組織プロセス)において、どんなDoがあればよいか?」という意識を日頃から顕在化している人には決して起きない。すぐに策に走る人に起きる問題。

策好き人間を、
組織プロセス好きに変身させることが必要。

------

(14) 時機を捉えよ

ティーチングとコーチングを区別しなければダメ!
「矯正屋」と「質問屋」はぜんぜん違う。

「ご発表いただいた内容のうち、自分たちが『ここは危ういな』と思っている箇所はありますか?それはどこですか?」と「次はどう進めようと考えていますか?」を確かめてから発言すべし。

------

(15) 点検点「反応するとこはそこじゃない」の継続

メンタルタフネス。
感情の安定感確保。
波に反応するな!潮に反応しろ!
それは「position(相手が放つ文字面)ではなく、interest(文字面の背後にある意図)を捉えろ」という交渉術の教えに通ずる。

------

(16) 余談

耳にタコ系の念仏をそろそろ卒業したい
たとえば、
「トップのリーダーシップが重要」
「顧客ニーズを捉えることが重要」

重要なことはもちろんわかるが
このフレーズを何年も(もしかしたら十数年も)繰り返すのはいかがなものか。
提言としてあまりにレベルが低い。

------

【その他】
・ 持続的利益を生む体質づくり。BSCの最下層に着手したい。これにより、「KPIで人は動かない」にも対処できる可能性が高まる。
・ 「カテゴリ・イノベーション」と「環境適応」と「競争戦略」の完全統合
・ みんな敵がいい。そのほうが大事ができる by勝海舟。緊張感をもって相手を理解し続けるべし
・ 遊戯三昧。「することを愉しむ」の徹底。自ら愉しみ、周りを巻き込む。それが、「自分もその世界に触れてみたい」「もっとその世界を深く知りたい」という好奇心をくすぐることになればとても嬉しい。
・ 「強みは何か?」から議論することは極めて危険。強みは、目的によって変動する。「強み」より、「いいところ」を大事にしたい。DICの復活が求められる。
・ 新規性の度合いの調整能力


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3957

Trending Articles