ワークセッション3回目
前回のワークでは、私たちの事業できるかどうかを問わず、顧客の要求期待項目を純粋に検討しました。そして今回は、その中の特定の要求期待項目を我々の事業が実現することを目指して、(1)着目した要求期待項目の実現に関わりうる経営資源をリストアップし、(2)それら経営資源リストから任意の経営資源を組み合わせると自分たちに何ができるかという要求品質を検討しました。今回のワークの最大の特徴は、上記の「(1)経営資源のリストアップ」と「(2)要求品質アイディアの検討」を、部門の枠を超えて検討したことです。私の会社は「方針管理」という組織マネジメント手法が深く浸透しており、普段は「自部門としてどうするか」という部門別行動になりがちです。今回のような「各部門の経営資源を持ち寄って、部門横断的に方策アイディアを考える」という取組みはとても新鮮でした。普段は自分の所属部門という狭く閉じた範囲の中で物事を考えがちだったため、未来の要求項目の実現に関わりうる経営資源が部門を超えて一堂に集められ、それらが任意に組み合わされて新たな方策アイディアが生まれる場は非常にダイナミックでした。大変刺激的でした。自分が思っていた以上にウチの会社にはたくさんのシーズがあることがよくわかりましたし、部門の枠を超えた任意の経営資源を組合せによる方策アイディアの検討はまさに「経営資源の総合化」と呼ぶに相応しいものでした。私の視野は確実に広がったと思います。
全3回を終えて振り返ってみると、今回のような部門の枠を超えた創造的な議論ができたのは、第1回WSで「事業が目指す姿」という目的をメンバー全員で共有できたからだとあらためて思います。初回WSではメンバー各人がどこかぎこちなくて、自分の意見をあまり声に出して言わない(言えない)人もいました。何事も初回というのはそういうものだという言い方もありますが、回を重ねるうちに、みんなで打ち立てた目的を是非とも叶えたいという「思いの強さ」と、目的の実現に自分も関わりたいという「貢献意欲の強さ」が増していき、最終的に第3回WSの創造的な議論に結びついたのではないかと思っています。個の力を引き出し、知識創造に多様性を活かす上で、個と個を結びつける「場」の重要性を改めて認識しました。創造性溢れる場をつくる鍵は、メンバー各人が「それを是非叶えたい。自分もその実現に関わりたい」と思える共通目的を打ち立てることができるかどうかにかかっているといっても過言ではないような気がします。共通目的が、コミュニケーションという情報流を活発化させ、その結果、斬新な知識の生成を可能にしたのだと思います。
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<以下、文章として作っては見たものの、結局、組み込まなかった文章たち>
多様な個の創造性を活かして私たちはメンバー相互の信頼を築き上げたのだと思います。共通の目的でメンバーがお互いに繋がり、目的を叶えるためにメンバー各人が自分の知識を持ち寄り、持ち寄った知識から新たな知識をみんなの力で生み出す・・・ 個の力を引き出し、知識創造に多様性を活かす上で、「場」の重要性を痛烈に感じました。
そのプロセスには「正解」というものはありません。正解が存在する物事では、間違ったことを言いたがらない日本人気質が議論での発言にブレーキをかけてしまう場合があると思うのですが、今回の一連の議論は回を追うごとにメンバー各自が「この場には正解はない。ここにあるのは、みんなで打ち立てた目的を叶えたいという「思いの強さ」と、目的の実現に自分も関わりたいという「貢献意欲の強さ」だけでいい」という気持ちでみんなの心が一つになっていたのではないかと思います。いつしか、誰も発言することをためらわなくなり、また、相手の意見を大切に受け止め、自分の意見をそこに丁寧に重ねることを一人ひとりが心がけていたように映ります。
初回の議論が、最終回で部門の枠を超えた方策アイディアの考案というかたちに結びついたことに感動しています。
「部門の枠を超えた方策アイディアの検討」というダイナミクスは、第1回WSの「目的の共有」が出発点だったとつくづく思います。
こうした取組みの継続が新製品・サービスの継続的な創造をもたらすのだとたしかに思います。
普段は自分が所属する部門の業務を粛々と進める日々であるため、こういう部門横断型の機会がなければ、所属部門の狭い範囲の中でしか検討できなかったと思います。冷静に考えれば、顧客が実現したいコトを部門内のシーズだけ実現し切ることなどできるはずもなく、あらためて、組織全体を俯瞰することの重要性を学びました。
私たちのグループが作成した経営資源リストにはたくさんの項目の個々は、それぞれ異なる部門に属しているものです。
普段は自分の業務遂行でいっぱいいっぱいでしたから、会社が保有する経営資源と言っても、自分がよく分かっているのは自分の所属部門の所属する部門が保有する経営資源のことしか分かりませんでした。
部門の枠を超えた経営資源の一覧表を見た時は、自分の会社全体が見えた気持ちになり、感動すら覚えました。ほかのメンバーも同じような様子でした。
それぞれの部門でできることはあまりにも限りがあります。特定一部門で事業が目指す姿を実現するのは到底不可能です。今回のワークを経験して、経営資源を総合化することの重要性を深く理解できたと思います。ただし、一口に経営資源を総合化するといっても、各部門が保有するシーズやノウハウなどの経営資源をただやみくもに書き並べてもあまり意味があるようには思えません。単にリスト化したところで、「で、次に何を考えればいいの?」という思考停止に陥ることは目に見えています。今回のワークは、「事業が目指す姿」という組織共通の目的のもとで、その実現に関わる可能性のあるすべての経営資源を各部門が持ち寄るというやり方は、経営資源の総合化を進めやすくする有効な方法だと思いました。
その中の一つに私が所属する企画部門の顧客データベースシステムが挙げられました。企画部門におけるこのシステムの役割は、顧客別購買履歴データの管理に過ぎなかったのですが、今回のワークを経てこのシステムに対して新たに「将来の顧客ニーズ仮説を社内の全部門が共有して議論する」という役割が加わりました。もう少し補足すると、「営業が収集した顧客別の声を自然言語処理ステムで数通りに自動的に読み替えることによって仮説としての将来ニーズが生成される。それをすべての部門が共有して、仮説の妥当性と実行可能性がサブシステムとしての社内SNSでの議論を通じて検証される」というものです。同じ経営資源でも、これほどまでに役割や位置づけが変わるとは驚きました。
ほかのメンバーも、本人の所属部門が保有する経営資源に対して認識を新たにする場面が随所にあり、新たな意味合いが加わって面白がっている様子でした。異なる意味合いが既存の経営資源にもたらされるというのはとても新鮮でした。