大野君(加藤研究室4年生)が仮説づくりをせっせと進めてくれているのですが
昨晩の進捗報告ファイルをみていて、さきほど「や、やばい!」と気づきました。
現時点での戦略ストーリは、
「三方よし」 になっていない。
あの発表の場は、
事業に関わるすべての利害関係者に対して
(1) 当該事業の「将来像」と
(2) その将来像が現実のものになるまでの「道筋」を明確に示し
(3) 共感と納得感に下支えされた各利害関係者の主体的行動を引き出す
ということがポイントになります。
各利害関係者の 「各」 がミソです。
当該事業には、さまざまな利害関係者が関わっています。
この戦略の成否は、
各利害関係者の共感と納得感を得ることができるかどうかにかかっている
といっても過言ではないのですが
現時点での戦略ストーリーは、
「聞く側の各利害関係者」からみて、「自分たちの損得」が明確に示されていない。
たとえば、ディーラー。
あの戦略ストーリは、彼らが当該事業に今後も関わることのメリットを示しているだろうか? あの戦略ストーリーに関わるとすれば、彼らは具体的に何をするのか? 「で、我々は何をすればいいんですか?」ということになりかねないのではないか?
戦略ストーリの実現に関わることによって、彼らはどのような恩恵を手にするのか? 彼らが手にする損得は、短期的あるいは長期的にみてどうなるのか? 仮に、「短期的には失うことがあったとしても、すこし長い目で見れば、結果として得るものが多い。具体的に、これこれこういう恩恵を得る可能性を秘めている」 というような、「恩恵の道筋」が示されているだろうか? もし、「短期的に苦しいが、長い目でみて一緒に歩んでほしい」という場合、では短期的には、どうしのぐのか? 向こう1,2年を何をして耐えるのか? こういったことを示さなくてよいか?
たとえば、協力工場。
彼らから見ると、この戦略ストーリは「機会」なのか? それとも「脅威」なのか?
後者に映りかねないことはないか?
自分たちの存続に大きく関わりうる項目として「適○適○・・・・」がある。果たしてこの打ち手は、彼らにとってありがたいものなのか?この打ち手によって、彼らはどのような恩恵を手にすることができるのか?継続的収益の獲得を約束するものなのか?
たとえば、現場最前線の営業マン。
これまで彼らの活動は、主として「売上」や「市場シェア」という達成尺度で縛られてきた。
戦略ストーリは、これまでの尺度の変容をもたらすものなのか?
これまでの尺度が、新たな尺度にまるっきり切り替わるのか?
それとも、これまでの尺度に加えて、新たな尺度にも取り組まなければならないのか?
もし、その場合、ただでさえ大変な状況なのに、なぜ新たに別のことをやらなければならないのか?
従来尺度と新規尺度は、整合性があるのか? 両者はどういう関係か? 両者がトレードオフの関係の場合、従来尺度の期末達成が困難になった場合、どちらを優先するのか?
従来尺度に加えて、新たな尺度にも取り組まなければならないという場合、新規に取り組む分だけ、いままでやっていたことに充ててきた時間を減らさなければならない。やり方が変わらないまま、充てる時間が減れば、常識的に考えて、従来型達成尺度の実現レベルは下がる。ところが、示された「従来型達成尺度の数値目標」が前年度より高い場合には、
「一体自分に何をどうしろというんだ!」ということになる。かなりの確率でそういうことになる。
従来型達成尺度は、測定可能。達成/未達が明確。しかも、客観的。
しかし、新たな取組みについては、達成尺度が同等か? 従来尺度とレベル感は合っているか?客観性をどう担保するのか?
レベル感が異なる2つの達成尺度が同時に示されたとする。
期中で、前者の従来型尺度の達成が困難に直面した時、
2つの尺度のうち、どちらを優先するか? 私が営業なら、きっと従来型尺度の達成に走る。だって、その指標は人事考課に直結しているのですもの。新規尺度については、どうせ曖昧な尺度なので、なんやかんや適当に言って、「その本格的な実現は次年度からにしましょう」と言い出すような気がする。これまでの方針が「努力目標の提示」に陥っていることが、現場からすると幸いして、それっぽく聞こえる“Check”をすれば別にどうってことない。「私なりに、できうる最善を尽くしましたが、実際の市場状況が・・・・だったことから、当期については致し方なかった」 と、ならないですかね?
「自分としてはがんばった」 という、常套文句が容易に想像できるのですが。。
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途中から各論の詳細に入ってしまいました。話を元に戻します。
要するに、この一連の投稿で書きたかったことは
当該事業に関わるすべての利害関係者から見て
現行の戦略ストーリは、「三方よし」になっているか? なっていないのではないか?
ということです。
基本はOKです。
「相手志向」 というか、 「聞く側目線」 というか、
見る人、聞く人、読む人からみた 「自分が得る恩恵」 という点を重視して、確実に示す必要があるように思います。