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インターナル・マーケティングの4側面
①インターナル・マーケティング・ミックス(“短期/内部的な視点”ד取引的志向”)
マーケティングの4Pの考えを戦術的に従来の組織内の活動に活かそうとする側面。
“短期/内部的な視点”と“取引的志向”によって特徴づけられるインターナル・マーケティングのアプローチである。焦点はマーケティング・ミックス、すなわち4Pにあてられる。
内部組織においての製品は仕事であり、企業は優秀な人材を集め、高い意欲で取り組んでもらうためにもその仕事を人々に売らなければならない。価格は労働を提供する対価として支払われる金額であるとともに、従業員にとっての心理的なコストや時間的なコストも意味している(Flipo,1986)。優れた人材を引きつけ、成果の上がる環境を考えることは、エクスターナル・マーケティングの場所に関する次元と似た考察が求められる。また、プロモーションは、社内におけるコミュニケーションとほぼ同義語として捉えられる。
②戦略的インターナル・マーケティング(“長期/外部的な視点”ד取引的志向”)
現在実施しているエクスターナル・マーケティングを効率的に行うために、計画・実施するインターナル・マーケティングである。
“取引的志向”の考えであるが、目標は“長期/外部的”で、焦点は外部に向けられている。インターナル・マーケティング・ミックスの観点では、組織のマーケティング対象が内部の従業員であったのに対し、戦略的インターナル・マーケティングの目標は組織の最終顧客であり、彼らの満足度の実現を目指すために展開される。
組織の長期的な目標を市場において実現するために、戦略的インターナル・マーケティングは「組織が企業戦略や事業戦略を有効に実行に移すことができるように、変革に対する社内の抵抗を解き、従業員に対して共通の目標を認識させ、統合するための計画的努力である」(Rafiq and Ahmed, 1993)との考えのもとで策定・実行される。
③プロセッショナル・インターナル・マーケティング(“短期/内部的な視点”ד関係的志向”)
短期的な視点から現在の組織内の部門間連携を効率的に改善しようとする戦術的な活用の側面。
“関係性志向”を重視しながらも、組織内においては比較的短期的で内部指向の目標の達成のために利用される。組織内にも供給者と需要者が存在し、最終市場で企業が効率的なマーケティングを実践するためには、それに先立って内部の需要―供給関係を適切に適合させなければならないとの考えに基づいている。部門間で水平的にやり取りする情報の質や、社内供給者と重要者で交換される仕事、すなわち製品やサービスの質に関する議論が重視される。
高橋、2014 pp.8
プロセッショナルIMは、関係的相互作用を原則とし、組織の目的が短期的で組織の内部に焦点があるという特徴を有する。プロセッショナルIMはTQMの考え方を採用しており、内部顧客と内部供給者という考え方を採用している(Voima, 2000)。IMは顧客と供給者がともに組織の内部に存在する(Collins and Payne, 1991)。
→ つまり、TQMはIM類型の一つであり、その特徴は「長期的」ではなく、「短期的」ということになる。
④インターナル・リレーションシップ・マネジメント(“長期/外部的な視点”ד関係的志向”)
最終的には一般顧客を対象としたエクスターナル・マーケティングをいかに有効なものにするかに焦点が置かれ、かつ市場での顧客と自社の関係の質を長期的に築くために展開されるインターナル・マーケティング。
この視点は関係性の志向とともに、長期的な視点から組織の目標の達成とそのための外部の顧客との良好な関係の構築、維持、ニーズの充足に焦点をあてたインターナル・マーケティングの考え方である。
プロセッショナル・インターナル・マーケティングの支店が内部の需要者-供給者である従業員の不満足の低減と交わす情報の質の向上を第一義的な目的としたのに対して、インターナル・リレーションシップ・マネジメントではあくまでも最終顧客の満足度の向上を組織の目標とした上で、そのための手法としてインターナル・マーケティングを活用しようとしている。
インターナル・マーケティングは、市場においての組織と顧客の関係性の質を向上させることを目的とした社内活動にチャレンジするためのものである。そのための、組織としての新たな知識の創造と伝達の統合を目的として行われる。スタッフの自立性とノウハウを統合しようとする関係性構築のプロセスを指す
Ballantyne(1997)
組織のマネジメントと特定の従業員間での関係性の構築ではなく、企業のあらゆるレベルにおいて存在する関係が重視されるなか、最終顧客との関係性構築を目指した長期的な活動を行うことに焦点が当てられている。
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インターナル・マーケティングに関するこれまでの研究から、
インターナル・マーケティングの定義とその扱う領域は多岐にわたっていることがわかる。
インターナル・マーケティングの重要要素として以下の5つが挙げられる。
①従業員の動機づけと満足感の充足 (F1)
②顧客志向と顧客満足 (F2)
③部門間の統合、コミュニケーションの促進 (F3)
④マーケティング的アプローチの組織内部適用 (F2)
⑤企業および事業戦略の実施 (F3)
P33-34
インターナル・マーケティングの八鉄段階はいくつかのフェイズに整理される。
フェイズ1 従業員の動機づけと満足度向上
インターナル・マーケティングの考えが初めて導入されたのは、企業が顧客に直接接することが避けられず、そこでのインタラクションそのものが顧客への商品(オファー)となるサービス産業においてである。そのようなビジネスで顧客との接点において業務に携わる人材の管理や育成を目的として利用された。
フェイズ2 顧客志向の実現
フェイズ1を基礎に焦点を顧客に移し、顧客満足を達成するための方策としてインターナル・マーケティングが考えられるようになった。Heskettらのサービス・プロフィット・チェーンも同フェイズの考えである。企業が市場に対して働きかけていたマーケティングの手法やツールが内部顧客に対しても有効に機能することが理論的に、そして実証的に示されてきた。
フェイズ3 部門間の統合と戦略の実行
市場に対するマーケティング(エクスターナル・マーケティング)のための戦略や活動プランの内容が有効かつ効率的に展開されるためには、日ごろから社内の部門間のコンフリクトの解消や適切に図られ、協力的な意思のもとでのコミュニケーションや連携、結合が実現されなければならない。こうした主張のもとに、すべての組織にとっての一般的手法、あるいはツールとしてインターナル・マーケティングが求められるようになってきていると言える。
ただし、上記の各フェイズは、1から2へ、そして3へと移行していくのではなく、その適用範囲と目的に合わせて発展的に拡張されるべきものであり、理論的にも現実的にもインターナル・マーケティングは1から3の他側面を持つことに留意する必要がある。
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インターナル・マーケティングの対象領域は
サービス業といった特定の業種に限定するものではなく、
産業一般に適用することができる
出典: 木村達也著 「インターナル・マーケティング」