カンコツの向上は、
技能のQCDの向上をもたらす。
ただし、それはあくまで着目したその技能のQCD向上に留まる。
既存の競争パラダイムが今後も続くという前提が成り立つならば、既存の技能のQCD向上に意味はあるが、競争パラダイムの転換によってその技能が別の技能に取って代わる場合、カンコツの向上による当該技能の向上がもたらす効果は限定的。極端な場合、意味がなくなる。
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競争戦略で決断する項目は2つ。
一つは、SP(Strategic Positioning:事業の戦略的ポジショニング)、
もう一つは、OC(Organization Capability:組織能力、組織オペレーション)。
現行の職業能力開発の議論は
後者に重きを置き過ぎているということはないだろうか?
後者と同様に、前者も重視されているだろうか?
後者に重きを置き過ぎると、
職業能力開発において、技能はQCD向上に終始する。
一方、
前者に重きを置くと
「競争優位を確立するための、今は無い新たな技能の開発」が重要になる。
SP(Strategic Positioning:事業の戦略的ポジショニング) によって
組織に求められる活動は異なる。
つまり、SPが活動を規定する。活動は、SPによって定められる。
経営の三要素は上から
ビジョン → 戦略(SP)→ オペレーション(OC)。
SP(Strategic Positioning:事業の戦略的ポジショニング)の上位には、ビジョンがある。
したがって上記の
「SP(Strategic Positioning:事業の戦略的ポジショニング) によって
求められる活動は異なる」という記載は、
ビジョンのよって、求められる活動は異なる。
ビジョンのよって、求められる技能は異なる。
ビジョンが活動を規定する。ビジョンが技能を規定する。
と置き換えても差し支えない。
技術を使いこなす腕前としての「技能」と
ビジョンおよび事業の戦略的ポジショニングの実現するための「活動」
がイコールになっていれば問題ない。
しかし、
IoTをはじめとする外部環境の激変に伴い
今後の持続的競争優位は、既存の技能だけで確立することは到底困難。
企業経営の発展は、
はじめに既存技能ありきではない。
SP(Strategic Positioning:事業の戦略的ポジショニング)さらに上位に位置付けられるビジョンによって、「今後求められる技能は何か?」「事業全体は、どのような技能ラインナップで構成されるべきか?」を常に考え続ける必要がある。
本来、
「今後求められる技能は何か?」「事業全体は、どのような技能ラインナップで構成されるべきか?」を常に考え続けるべきは、企業自身である。
しかし、
今後を外部環境を展望し、
個々の企業の違いのよらない「備えるべき主たる技能」を
産業界に提言していくことが、我が国産業の成長と発展に求められる。
未来の技能として、どのような技能を備える必要があるか。
そのような未来の技能に必要なカンコツとはどういうものか。
それを予期し、提言するに相応しい担い手は、どの機関か?