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Channel: ひょんなことから国立大学助教授になった加藤雄一郎の奮闘記
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コラム1 サービス・ドミナント・ロジック

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みなさんが理想追求型QCストーリーを用いて検討する際、サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)という新しい概念が大変参考になります。我が国ではあまり知られていませんが、この考え方が誕生した米国では、マーケティング実務および研究の大本山ともいえるアメリカ・マーケティング協会(AMA)が数度にわたってマーケティング定義を改定することに影響を及ぼしたといわれています。

S-Dロジックにおいて「価値」は、製品(あるいはサービス)に初めから備わっているのではなく、顧客の使用によってはじめて発現するという立場を取ります。「製品・サービスは、顧客が価値を実現するための道具(手段)に過ぎず、製品・サービスに価値そのものがあるわけではない」という点が最大のポイントです。S-Dロジックでは、工場出荷時の製品そのものに価値があるわけではないと考えられています。

「価値提供」という言葉を実務でしばしば耳にしますが、S-Dロジックにおいては残念ながら、企業は「価値提供者」にはなれません。価値について企業ができることは「提供」ではなく、「提案」に留まります。「こういう価値の実現を一緒に目指そう!」という、顧客と共創する価値の提案に留まるのです。それならば、企業は何も提供していないのかというと、そうではありません。価値を実現するための手段(道具)としての製品・サービスを提供しています。企業が行っていることは「価値提供」ではなく、「“価値の提案”と“価値を実現する手段(道具)の提供”」なのです。

〔リード・ユーザーの設定⇒取引継続期間の設定⇒・・・⇒何屋規定⇒共創プロセスの策定〕 という一連のプロセスは、「顧客に提案するに相応しい価値は何か?」と「価値を実現するために、どのような道具があればいいのか?」という2点を探索するプロセスといえます。

「Step1 リード・ユーザーの設定において、リード・ユーザー自身による創意工夫の実態を記してください」と注意事項に強調した最大の理由は、今後提供すべき道具のヒントを取っ掛かりとして得るためです。


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