P17
サービス・デザインとは、
ビジネスを顧客の視点から体系的に編成する取組みです。
その目的は、企業と顧客のインタラクションのあらゆる局面において、快適なカスタマ・エクスペリエンスを提供することにあります。
*カスタマ・エクスペリエンス: 顧客経験価値。商品やサービスを購入したり使用したりする経験によって得られる感覚的、感情的な付加価値。
P29
サービス・デザインは、イデオロギーではありません。そして、その目標は、なんとかして顧客の移り気な望みに応じようとすることではありません。サービス・デザインは、利益をモチベーションとする、紛れもないビジネス中心型の取組みであり、その基盤となるのは、実益のあることがすでに判明している事実です。顧客は、自身が納得できるかたちで望みどおりのものを手に入れれば、適正な対価を支払おうとするし、再訪したり、その製品やサービスを友人に薦めたりもします。
P18
本書ではエクスペリエンスを向上させる方法を考察します。
つまり、顧客が何かを購入するかどうかを検討し始めた瞬間からスタートし、その購入品のライフ・サイクルが終了するまでの、サービス全体をデザインする方法です。インタラクションのあらゆるポイントを改善すれば、顧客満足度は高くなります。
P22
デザイン・プロセスは、デザインするべき対象がサービスであっても製品であっても、サービス・デザインと呼ばれます。デザインは、外観を美しく整えるだけの仕事ではありません。デザインとは、何かに「形を与える」ことを意味します。つまり、無形のアイデアを有形化し、人々が経験できる事物として形作ることです。
P28
デザインとは、ひとつの反復プロセスであり、実行、評価、改善のサイクルを何回も繰り返さなければ、完成に至りません。
P34
飛行機のパイロットは、空港や飛行機のことなら熟知しているでしょうが、乗客が味わう典型的なフラストレーションを経験したことはないかもしれません。たとえばチェックインでの長い待ち行列、セキュリティ検査、重量オーバーの荷物、泣き続ける赤ん坊、狭苦しい座席、美味しくない機内食などです。そうだとすれば、機内サービスの向上についてパイロットが助言しても、おそらく役に立たないでしょう。
P28
サービス・デザインには、ルールが一つしかありません。ユーザー中心の原則に従いつつ、顧客、サービスの提供者、その他のステークホルダーといった、案件に関わるすべての人々の協力を得ることです。
【出典】
「サービス・デザイン入門」
J・マルゴス・クラール著、郷司陽子翻訳、長谷川敦士監修
ピー・エヌ・エヌ新社