1) ビジョンと人材像の実質化
1.1 ビジョンと人材像の明確化
1.2 人材像に基づく採用・評価・登用
1.3 ビジョンと人材像の浸透・共有
2) コミュニケーションを通じた人材育成
2.1 コミュニケーションを通じた相互理解と支援
2.2 フィードバックによる気づきを通じた能力開発
2.3 相互に学び支援し啓発し合う組織
3) 仕事を通じた人材育成
3.1 仕事及び必要能力の体系化可視化と自身の能力水準の把握
3.2 仕事における背伸びを通じた能力開発と成長
3.3 キャリアステップの提供による成長の継続
4) 職場育成機能を補完する人材育成投資
4.1 充分な初任者導入教育
4.2 職場では得られない特定スキル・基礎理論や教養の獲得
4.3 長期的視点の意図的なコア人材育成投資
5) 人・仕事・キャリアへの取り組み姿勢の形成支援
5.1 個人に焦点当てた人間尊重の風土と人への関心
5.2 気づきや腹落ちを通しての仕事観や仕事への取り組み姿勢の形成
5.3 高い視線や広い視野をもったキャリア自律の意識の形成
---以下、講義メモ---
1) ビジョンと人材像の実質化
1.1 ビジョンと人材像の明確化
組織として目指す姿、期待される行動や人材像などが明確に定義されている。企業ビジョンやビジネスモデルと整合性のある人材像が定義されているか。
かつては「最低限のスキル」と「やる気」でどうにかなった。しかし、「がんばれば昇進する」という、縦の幻想を盾にして従業員のモチベーションを維持・向上させることが難しくなった。また、仕事が難しくなり、「コンピテンシー」という概念が登場した。
→疑問→ 組織側が求めるコンピテンシーを明確に定めることの重要性は分かる。しかし、それを示すだけで成り立つ「組織と従業員の関係」は、示されたコンピテンシーがたまたまその個人と一致している場合以外に成り立たないのではないか?
1.2 人材像に基づく採用・評価・登用
「期待される人材像」に基づいて人材の採用が行われ、その基準が評価制度や人材の登用基準にも十分反映されている。スタバのアルバイト採用でファーストインプレッションは何を見ているのか?なぜ、学生アルバイトが3年続くのか?
求めるコンピテンシーに基づき、一次・二次・三次で判定する。「ここを通じて、自分がどうなりたいのか」を問い、相手の出方や主張を見極める。
→反省→ 組織側が求める人物像を採用時に提示してきたつもりではいた。しかし、客観性をもった基準を示すことはできていなかった。さらに問題は、加入後に事案を経験させるにせよ、「登用基準」というものが存在していなかった。それにより、一部メンバーの組織に対する不信感を招く。また、メンバー間で嫉妬の発生を招く。
1.3 ビジョンと人材像の浸透・共有
組織として目指す姿や、期待される人材像の意味するところが社員にも広く浸透し、共有され、具体的な仕事の場面での意味を社員一人ひとりが理解している。
朝礼の唱和だけでなダメ。自分の言葉で、身近な具体例をたくさん、自分の体験談が効果的。「単なる認識」と「腹落ち」はまったく違う。腹落ちすれば、異なる場面や局面で該当事象を思いつく。腹落ちを促し、組織全体に浸透する仕組みと研修が必要。
→感想→ 某社が「自社ウェイ」の浸透を図る方策として、「該当する自分自身の経験をレポートせよ」があったが、これはまさに上記に該当すると思う。
2) コミュニケーションを通じた人材育成
2.1 コミュニケーションを通じた相互理解と支援
社員は、自分の仕事における期待や果たすべき役割について、上司や周囲の先輩、同僚等と十分なコミュニケーションを通じて理解しており、仕事への取組みにあたって周囲から支援を受けている。
理解なきところに支援なし。かつてと比べて、各人の仕事が見えない。仕事の可視化、つまり、誰が何の仕事をしているかを相互に理解することが重要。PC環境で職場は静かになった。職場の高齢化と若者の社会性低下も課題。月1回、上司と部下の面談を実施している企業もある。
重要なことは、ミスを冒した人間の責任を追及することではなく、「原因究明」と「未然防止」。怒ってはならない。「それは大変だ。助けるよ!」が、相互理解と支援が普及する鍵。
→疑問→ 「理解なきところに支援なし」は、そのとおりだと思う。しかし、この世知辛い世の中は、企業組織にも当てはまり、たとえば、管理職には時間的にも精神的にも余裕がない。部員も、自分の業務を達成することが良くも悪くも最大の関心事になっており、業績に直接かかわらない事柄に時間を充てる動機づけは弱いと思われる。「周辺を理解すること」の重要性は頭では理解できるが、実際にはそこまで手が回らない事情がある。管理職や部員の個々人に対して「相互理解をするように」と言うだけでは、事態は変わらないのではないか。「相互理解が不可欠になるための組織開発」がなにより重要になると思う。別の言い方をすると、「相互理解および支援しなければ、自分に降りかかる」という直接的利害を組み込んだ仕組みの開発が求められる。
2.2 フィードバックによる気づきを通じた能力開発
この会社では、上司だけではなく先輩や同僚、部下、後輩など多様な人から、ポジティブ・ネガティブ両面のフィードバックを受けることを通じて、一人ひとりが気づきを得ている。
上司が部下を育てるのではなく、皆で育てる仕組みがないと、フィードバックのタイプが偏り、人間観が固定化しやすい。部下から見て、上司は利害が大きすぎる。
[追加話題1] 上司と親は、基本的にネガティブフィードバックになりがち。
[追加話題2] 多くの管理職に共通する傾向として、自分自身に対する「自己肯定感」が弱い。誰からも褒められない実態が原因。「失敗が怖い」と「成功する気がしない」は、まったく別物であることに注意が必要。
[追加話題3] 誰から褒められるのが一番うれしいか?その答えは、上司ではない。「顧客」であるべき。
→疑問→ 正論。しかし、組織によっては理想論。前項と同様、「相互理解および支援しなければ、自分に降りかかる」という直接的利害を組み込んだ仕組みの開発が求められると思う。講師は直接の上司以外の人間の必要性の理由として「人間観の固定化」を挙げたが、それ以外にも、というか、さらに現実的に厳しい理由があると思う。それは、権限移譲の重要性が説かれる一方、実際には権限は与えられず、責任だけが課せられている場合が少なくない管理職の実情。実際、部下一人ひとりに適切なフィードバックを実践できる余裕はない。管理職任せにするのではなく、組織としてのフィードバック促進をサポートする仕組みを築かなければ、理想論で終わる。各部門が顧客から褒められるよう、すべての部門がwin-win-win-winになるよう各部門の連携全体を表現することが、相互理解と支援・フィードバックを促進する鍵になるのではないか。
2.3 相互に学び支援し啓発し合う組織
この会社では相互学習の場が多く、互いに教え合い、学び合い、刺激し合うことが習慣となっており、社員はそうした機会を十分得ている。上司の役割は、教えること以上に、教え合う職場を作ること。たとえば、ANAの目的地到着後のキャビンアテンダントたちによるデ・ブリーフィング。同僚の事例はなにより参考になる。
→疑問→ あ、そうか。この講師は上述の3項目(「コミュニケーションを通じた相互理解と支援」、「フィードバックによる気づきを通じた能力開発」、「相互に学び支援し啓発し合う組織」)のいずれも、部門内のことを言っているんだ。一方、私の疑問や感想は、「部門内」ではなく、「部門間」(つまり、事業全体)を想定していますね。講師の前述の教示はまったくその通りだと思いますが、「事業を構成するすべての部門」の場合、現状は方法論が無いのではないか?組織開発と呼ぶ現状は、何に着眼し、どのような手続きを教示しているのかな??大変興味あります。
3) 仕事を通じた人材育成
3.1 仕事及び必要能力の体系化可視化と自身の能力水準の把握
一人ひとりが、仕事の全体像や拝啓、仕事遂行に求められる能力発揮水準、それと比した自身の現状の能力発揮レベルを理解した上で、日々の仕事に取組んでいる。なお、仕事の深みと自身の一を見失うと、仕事をなめてかかるようになる。
→疑問→ 要はタレントマネジメントやれ!ってこと??
3.2 仕事における背伸びを通じた能力開発と成長
一人ひとりが常に成長できる仕事に取組めるように、育成を意識した背伸びの仕事課題付与が行われ、その過程で経営者や管理職が社員を支援している。
上司は部下に課題を付与する時に、育成をどの程度意識しているか。成長の為だと理解させているか。そもそも成長に有効な課題で育成目的付与可能な課題があるのか?
→感想→ 上から与えられなければ成長しない層は、私のターゲットではない。他の様々な研修業者やコンサルに任せる。そこに踏み込もうとは思わない。私のターゲットは、グループリーダーや新任課長。つまり、10年後には事業全体の担い手になりうる層。彼らの場合、課題が上から与えられている場合ではない。課題は自らが形成すべき。私がやるべきは、彼らが自ら課題を形成できるプラットフォームを提供すること。
3.3 キャリアステップの提供による成長の継続
この会社は、個人の中長期的、継続的成長や、キャリアの形成のための次のステップを社員に意識させ、その機会を提供している。
「成長実感」と「成長予感」。この会社で長く頑張りたいかどうかは、成長実感以上に、成長予感と相関が高い。将来がわからない時代にキャリアパスは見せられないが、先行き不透明な時代とはいえ、せめて次のステップを見せることは重要。3~5年後に自分が成長していると思えることが重要。本人がそれを想像する際、先輩や上司を見る。
→感想→ 成長予感!!たいへん良いことを教わりました。たしかに。「ここにいれば、自分はもっといい景色を見れそう」と思えば、簡単には辞めないと思う。ただし!「もっといい景色を見れそう」は、個人のキャリア展望のことだけではないと思う。成長するのは人だけじゃない。組織も同じ。個人のキャリア展望だけでなく、事業のキャリア展望(つまり、当該事業は社会から見て今後どういう発展を遂げていくのかという展望)も同じくらい重要だと思う。「そのような事業の発展に備えて、自分は今後どのような能力を必要とするか?そのような能力獲得の過程を経る自分のキャリアは自分の人生においてどういう意味をもつか?」というのが、長期的展望に立った組織と従業員のエンゲージメントの構築になるのではないか。
4) 職場育成機能を補完する人材育成投資
4.1 充分な初任者導入教育
入社時(新卒・中途とも)や、職種転換の時など、個人が大きな変化に直面する際、新しい職務、職場に適用するための支援や学びの機会が、会社から十分に提供されている。新入社員の早期離職は、ちゃんと手を打てば確実に低下する。
→感想→ 特になし。
4.2 職場では得られない特定スキル・基礎理論や教養の獲得
この会社は、職場での育成機能(OJTなど)ではカバーしきれない能力育成・開発のために、職場外の学習機会、研修等の十分な人材育成投資を行っている。たとえば、新しいビジネスモデルのノウハウ、一般教養や基礎理論、万が一の時の判断力養成などは職場では開発できない。
→感想→ 理想論と言われようが何だろうが、「研修無し」を目指す。企業内のプロジェクトがこれらを担うのが理想。事業創造WGはその象徴。
4.3 長期的視点の意図的なコア人材育成投資
この会社は、リーダー人材、高度専門人材の育成など、日常業務では育ち難く、育成に時間のかかる人材を長期的視点で発掘し、育成に取り組んでいる。リーダーシップは必要になった時に身につけようとしても無理。高度専門職は経験豊かな実務専門職とは違い、社内業務経験だけでは育たない。
→感想→ だから、社内に事業創造プロジェクトが常設されていることが望ましい。あ、常設なのだから、プロジェクトじゃないか(汗)。全員参加型の年次BM大会が理想だと思う。
5) 人・仕事・キャリアへの取り組み姿勢の形成支援
5.1 個人に焦点当てた人間尊重の風土と人への関心
この会社では、日常の多様なコミュニケーションを通じて、個人が人間として相互に関心を持ち合い、人として尊重し合い、支え合う風土が確立されている。実際、サイバーエージェントは、当初は高い退職率に悩まされたが、個人に焦点を当てた諸施策によって大幅改善した。
→疑問→ 「相互に関心を持て!」と言われただけでは、関心を持ちようがない。相互に関心をもたずにいられない組織開発が重要。その出発点は、自分と他のつながりを認知すること。サービス・デリバリ・プロセスは最強の道具になりうるのではないだろうか。「どのような理由で顧客から褒められたいか?」という事業全体のコンセプトを定め、そのコンセプトを実現するための部門間協調の様子をサービス・デリバリ・プロセスとして組織全体が共有すれば、従業員各人は自分の業務だけに注力していればいいわけではないことを否が応でも認識する。これからの特効薬は、「個人を対象にした諸施策」ではなく、「部門横断型チーム」を対象としたPBL(Problem Based Learning)」だと思う。これを研修ではなく、業務として継続することが、(1)従業員自らによる課題の形成と、(2)メンバー相互の理解・支援・フィードバックをもたらすのではないか。
5.2 気づきや腹落ちを通しての仕事観や仕事への取り組み姿勢の形成
この会社では、一人ひとりが気づきや納得のプロセスを通して、しっかりとした価値観やマインドセット、姿勢を持ち、自分の仕事に取組んでいる。定着とは、行動様式が変容すること。たとえば、ベネッセスタイルケアでは、入所者「お見送り」のあとに必ず振り返りの会を実施。
→感想→ この項目は、前述の「2.3 相互に学び支援し啓発し合う組織」と一見すると似ているけど、「定着」という点で違うんのかな。定着とは、行動様式の変容。なるほど。さらに付け加えると、行動変容は、思考・認知の変容があって初めて実現する。「行動療法」と「認知行動療法」を区別して、後者を重視すべきということと同様、(1)変容すべき行動、(2)行動変容をもたらすために変容すべき認知、(3)そのような認知変容を安定的に持続するための様式を構築するためのアイディア(明文化すべき行動規範や各種施策アイディア)、というステップを踏んで定着を図りたい。これが、新様式確立のステップなのではないか。
5.3 高い視線や広い視野をもったキャリア自律の意識の形成
この会社では、一人ひとりが高い視点と広い視野を持ち、主体的に、向上心を持って自身のキャリア形成に取組んでいる。キャリアは、習慣がつくる。自分のキャリアへの主体的取り組み姿勢は、単純に目標を持てという話ではない。
→感想→ キャリアは習慣が作る。なるほど!別講演でも同じ主張がありました。『キャリアは、「思考習慣(マインドセット)」と「行動習慣(ビヘイビアセット)」という2タイプのOSを継続的に発展させることによって形成される』という主張がありえそうですね。
1.1 ビジョンと人材像の明確化
1.2 人材像に基づく採用・評価・登用
1.3 ビジョンと人材像の浸透・共有
2) コミュニケーションを通じた人材育成
2.1 コミュニケーションを通じた相互理解と支援
2.2 フィードバックによる気づきを通じた能力開発
2.3 相互に学び支援し啓発し合う組織
3) 仕事を通じた人材育成
3.1 仕事及び必要能力の体系化可視化と自身の能力水準の把握
3.2 仕事における背伸びを通じた能力開発と成長
3.3 キャリアステップの提供による成長の継続
4) 職場育成機能を補完する人材育成投資
4.1 充分な初任者導入教育
4.2 職場では得られない特定スキル・基礎理論や教養の獲得
4.3 長期的視点の意図的なコア人材育成投資
5) 人・仕事・キャリアへの取り組み姿勢の形成支援
5.1 個人に焦点当てた人間尊重の風土と人への関心
5.2 気づきや腹落ちを通しての仕事観や仕事への取り組み姿勢の形成
5.3 高い視線や広い視野をもったキャリア自律の意識の形成
---以下、講義メモ---
1) ビジョンと人材像の実質化
1.1 ビジョンと人材像の明確化
組織として目指す姿、期待される行動や人材像などが明確に定義されている。企業ビジョンやビジネスモデルと整合性のある人材像が定義されているか。
かつては「最低限のスキル」と「やる気」でどうにかなった。しかし、「がんばれば昇進する」という、縦の幻想を盾にして従業員のモチベーションを維持・向上させることが難しくなった。また、仕事が難しくなり、「コンピテンシー」という概念が登場した。
→疑問→ 組織側が求めるコンピテンシーを明確に定めることの重要性は分かる。しかし、それを示すだけで成り立つ「組織と従業員の関係」は、示されたコンピテンシーがたまたまその個人と一致している場合以外に成り立たないのではないか?
1.2 人材像に基づく採用・評価・登用
「期待される人材像」に基づいて人材の採用が行われ、その基準が評価制度や人材の登用基準にも十分反映されている。スタバのアルバイト採用でファーストインプレッションは何を見ているのか?なぜ、学生アルバイトが3年続くのか?
求めるコンピテンシーに基づき、一次・二次・三次で判定する。「ここを通じて、自分がどうなりたいのか」を問い、相手の出方や主張を見極める。
→反省→ 組織側が求める人物像を採用時に提示してきたつもりではいた。しかし、客観性をもった基準を示すことはできていなかった。さらに問題は、加入後に事案を経験させるにせよ、「登用基準」というものが存在していなかった。それにより、一部メンバーの組織に対する不信感を招く。また、メンバー間で嫉妬の発生を招く。
1.3 ビジョンと人材像の浸透・共有
組織として目指す姿や、期待される人材像の意味するところが社員にも広く浸透し、共有され、具体的な仕事の場面での意味を社員一人ひとりが理解している。
朝礼の唱和だけでなダメ。自分の言葉で、身近な具体例をたくさん、自分の体験談が効果的。「単なる認識」と「腹落ち」はまったく違う。腹落ちすれば、異なる場面や局面で該当事象を思いつく。腹落ちを促し、組織全体に浸透する仕組みと研修が必要。
→感想→ 某社が「自社ウェイ」の浸透を図る方策として、「該当する自分自身の経験をレポートせよ」があったが、これはまさに上記に該当すると思う。
2) コミュニケーションを通じた人材育成
2.1 コミュニケーションを通じた相互理解と支援
社員は、自分の仕事における期待や果たすべき役割について、上司や周囲の先輩、同僚等と十分なコミュニケーションを通じて理解しており、仕事への取組みにあたって周囲から支援を受けている。
理解なきところに支援なし。かつてと比べて、各人の仕事が見えない。仕事の可視化、つまり、誰が何の仕事をしているかを相互に理解することが重要。PC環境で職場は静かになった。職場の高齢化と若者の社会性低下も課題。月1回、上司と部下の面談を実施している企業もある。
重要なことは、ミスを冒した人間の責任を追及することではなく、「原因究明」と「未然防止」。怒ってはならない。「それは大変だ。助けるよ!」が、相互理解と支援が普及する鍵。
→疑問→ 「理解なきところに支援なし」は、そのとおりだと思う。しかし、この世知辛い世の中は、企業組織にも当てはまり、たとえば、管理職には時間的にも精神的にも余裕がない。部員も、自分の業務を達成することが良くも悪くも最大の関心事になっており、業績に直接かかわらない事柄に時間を充てる動機づけは弱いと思われる。「周辺を理解すること」の重要性は頭では理解できるが、実際にはそこまで手が回らない事情がある。管理職や部員の個々人に対して「相互理解をするように」と言うだけでは、事態は変わらないのではないか。「相互理解が不可欠になるための組織開発」がなにより重要になると思う。別の言い方をすると、「相互理解および支援しなければ、自分に降りかかる」という直接的利害を組み込んだ仕組みの開発が求められる。
2.2 フィードバックによる気づきを通じた能力開発
この会社では、上司だけではなく先輩や同僚、部下、後輩など多様な人から、ポジティブ・ネガティブ両面のフィードバックを受けることを通じて、一人ひとりが気づきを得ている。
上司が部下を育てるのではなく、皆で育てる仕組みがないと、フィードバックのタイプが偏り、人間観が固定化しやすい。部下から見て、上司は利害が大きすぎる。
[追加話題1] 上司と親は、基本的にネガティブフィードバックになりがち。
[追加話題2] 多くの管理職に共通する傾向として、自分自身に対する「自己肯定感」が弱い。誰からも褒められない実態が原因。「失敗が怖い」と「成功する気がしない」は、まったく別物であることに注意が必要。
[追加話題3] 誰から褒められるのが一番うれしいか?その答えは、上司ではない。「顧客」であるべき。
→疑問→ 正論。しかし、組織によっては理想論。前項と同様、「相互理解および支援しなければ、自分に降りかかる」という直接的利害を組み込んだ仕組みの開発が求められると思う。講師は直接の上司以外の人間の必要性の理由として「人間観の固定化」を挙げたが、それ以外にも、というか、さらに現実的に厳しい理由があると思う。それは、権限移譲の重要性が説かれる一方、実際には権限は与えられず、責任だけが課せられている場合が少なくない管理職の実情。実際、部下一人ひとりに適切なフィードバックを実践できる余裕はない。管理職任せにするのではなく、組織としてのフィードバック促進をサポートする仕組みを築かなければ、理想論で終わる。各部門が顧客から褒められるよう、すべての部門がwin-win-win-winになるよう各部門の連携全体を表現することが、相互理解と支援・フィードバックを促進する鍵になるのではないか。
2.3 相互に学び支援し啓発し合う組織
この会社では相互学習の場が多く、互いに教え合い、学び合い、刺激し合うことが習慣となっており、社員はそうした機会を十分得ている。上司の役割は、教えること以上に、教え合う職場を作ること。たとえば、ANAの目的地到着後のキャビンアテンダントたちによるデ・ブリーフィング。同僚の事例はなにより参考になる。
→疑問→ あ、そうか。この講師は上述の3項目(「コミュニケーションを通じた相互理解と支援」、「フィードバックによる気づきを通じた能力開発」、「相互に学び支援し啓発し合う組織」)のいずれも、部門内のことを言っているんだ。一方、私の疑問や感想は、「部門内」ではなく、「部門間」(つまり、事業全体)を想定していますね。講師の前述の教示はまったくその通りだと思いますが、「事業を構成するすべての部門」の場合、現状は方法論が無いのではないか?組織開発と呼ぶ現状は、何に着眼し、どのような手続きを教示しているのかな??大変興味あります。
3) 仕事を通じた人材育成
3.1 仕事及び必要能力の体系化可視化と自身の能力水準の把握
一人ひとりが、仕事の全体像や拝啓、仕事遂行に求められる能力発揮水準、それと比した自身の現状の能力発揮レベルを理解した上で、日々の仕事に取組んでいる。なお、仕事の深みと自身の一を見失うと、仕事をなめてかかるようになる。
→疑問→ 要はタレントマネジメントやれ!ってこと??
3.2 仕事における背伸びを通じた能力開発と成長
一人ひとりが常に成長できる仕事に取組めるように、育成を意識した背伸びの仕事課題付与が行われ、その過程で経営者や管理職が社員を支援している。
上司は部下に課題を付与する時に、育成をどの程度意識しているか。成長の為だと理解させているか。そもそも成長に有効な課題で育成目的付与可能な課題があるのか?
→感想→ 上から与えられなければ成長しない層は、私のターゲットではない。他の様々な研修業者やコンサルに任せる。そこに踏み込もうとは思わない。私のターゲットは、グループリーダーや新任課長。つまり、10年後には事業全体の担い手になりうる層。彼らの場合、課題が上から与えられている場合ではない。課題は自らが形成すべき。私がやるべきは、彼らが自ら課題を形成できるプラットフォームを提供すること。
3.3 キャリアステップの提供による成長の継続
この会社は、個人の中長期的、継続的成長や、キャリアの形成のための次のステップを社員に意識させ、その機会を提供している。
「成長実感」と「成長予感」。この会社で長く頑張りたいかどうかは、成長実感以上に、成長予感と相関が高い。将来がわからない時代にキャリアパスは見せられないが、先行き不透明な時代とはいえ、せめて次のステップを見せることは重要。3~5年後に自分が成長していると思えることが重要。本人がそれを想像する際、先輩や上司を見る。
→感想→ 成長予感!!たいへん良いことを教わりました。たしかに。「ここにいれば、自分はもっといい景色を見れそう」と思えば、簡単には辞めないと思う。ただし!「もっといい景色を見れそう」は、個人のキャリア展望のことだけではないと思う。成長するのは人だけじゃない。組織も同じ。個人のキャリア展望だけでなく、事業のキャリア展望(つまり、当該事業は社会から見て今後どういう発展を遂げていくのかという展望)も同じくらい重要だと思う。「そのような事業の発展に備えて、自分は今後どのような能力を必要とするか?そのような能力獲得の過程を経る自分のキャリアは自分の人生においてどういう意味をもつか?」というのが、長期的展望に立った組織と従業員のエンゲージメントの構築になるのではないか。
4) 職場育成機能を補完する人材育成投資
4.1 充分な初任者導入教育
入社時(新卒・中途とも)や、職種転換の時など、個人が大きな変化に直面する際、新しい職務、職場に適用するための支援や学びの機会が、会社から十分に提供されている。新入社員の早期離職は、ちゃんと手を打てば確実に低下する。
→感想→ 特になし。
4.2 職場では得られない特定スキル・基礎理論や教養の獲得
この会社は、職場での育成機能(OJTなど)ではカバーしきれない能力育成・開発のために、職場外の学習機会、研修等の十分な人材育成投資を行っている。たとえば、新しいビジネスモデルのノウハウ、一般教養や基礎理論、万が一の時の判断力養成などは職場では開発できない。
→感想→ 理想論と言われようが何だろうが、「研修無し」を目指す。企業内のプロジェクトがこれらを担うのが理想。事業創造WGはその象徴。
4.3 長期的視点の意図的なコア人材育成投資
この会社は、リーダー人材、高度専門人材の育成など、日常業務では育ち難く、育成に時間のかかる人材を長期的視点で発掘し、育成に取り組んでいる。リーダーシップは必要になった時に身につけようとしても無理。高度専門職は経験豊かな実務専門職とは違い、社内業務経験だけでは育たない。
→感想→ だから、社内に事業創造プロジェクトが常設されていることが望ましい。あ、常設なのだから、プロジェクトじゃないか(汗)。全員参加型の年次BM大会が理想だと思う。
5) 人・仕事・キャリアへの取り組み姿勢の形成支援
5.1 個人に焦点当てた人間尊重の風土と人への関心
この会社では、日常の多様なコミュニケーションを通じて、個人が人間として相互に関心を持ち合い、人として尊重し合い、支え合う風土が確立されている。実際、サイバーエージェントは、当初は高い退職率に悩まされたが、個人に焦点を当てた諸施策によって大幅改善した。
→疑問→ 「相互に関心を持て!」と言われただけでは、関心を持ちようがない。相互に関心をもたずにいられない組織開発が重要。その出発点は、自分と他のつながりを認知すること。サービス・デリバリ・プロセスは最強の道具になりうるのではないだろうか。「どのような理由で顧客から褒められたいか?」という事業全体のコンセプトを定め、そのコンセプトを実現するための部門間協調の様子をサービス・デリバリ・プロセスとして組織全体が共有すれば、従業員各人は自分の業務だけに注力していればいいわけではないことを否が応でも認識する。これからの特効薬は、「個人を対象にした諸施策」ではなく、「部門横断型チーム」を対象としたPBL(Problem Based Learning)」だと思う。これを研修ではなく、業務として継続することが、(1)従業員自らによる課題の形成と、(2)メンバー相互の理解・支援・フィードバックをもたらすのではないか。
5.2 気づきや腹落ちを通しての仕事観や仕事への取り組み姿勢の形成
この会社では、一人ひとりが気づきや納得のプロセスを通して、しっかりとした価値観やマインドセット、姿勢を持ち、自分の仕事に取組んでいる。定着とは、行動様式が変容すること。たとえば、ベネッセスタイルケアでは、入所者「お見送り」のあとに必ず振り返りの会を実施。
→感想→ この項目は、前述の「2.3 相互に学び支援し啓発し合う組織」と一見すると似ているけど、「定着」という点で違うんのかな。定着とは、行動様式の変容。なるほど。さらに付け加えると、行動変容は、思考・認知の変容があって初めて実現する。「行動療法」と「認知行動療法」を区別して、後者を重視すべきということと同様、(1)変容すべき行動、(2)行動変容をもたらすために変容すべき認知、(3)そのような認知変容を安定的に持続するための様式を構築するためのアイディア(明文化すべき行動規範や各種施策アイディア)、というステップを踏んで定着を図りたい。これが、新様式確立のステップなのではないか。
5.3 高い視線や広い視野をもったキャリア自律の意識の形成
この会社では、一人ひとりが高い視点と広い視野を持ち、主体的に、向上心を持って自身のキャリア形成に取組んでいる。キャリアは、習慣がつくる。自分のキャリアへの主体的取り組み姿勢は、単純に目標を持てという話ではない。
→感想→ キャリアは習慣が作る。なるほど!別講演でも同じ主張がありました。『キャリアは、「思考習慣(マインドセット)」と「行動習慣(ビヘイビアセット)」という2タイプのOSを継続的に発展させることによって形成される』という主張がありえそうですね。