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Channel: ひょんなことから国立大学助教授になった加藤雄一郎の奮闘記
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いまなぜサービス・デザインか?

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サービス・デザインとは、
「顧客が求めていることをきちんと提供していればそこに価値が生まれる」
という素朴な原理を、素直に実現しようとする概念。

サービス・デザインとは、
ビジネスを顧客の視点から体系的に編成する取組み。

その目的は、企業と顧客のインタラクションのあらゆる局面において、快適なカスタマ・エクスペリエンス(顧客経験価値、製品やサービスを購入したり使用したりする経験によって得られる感覚的・感情的な付加価値)を提供することにある。

サービス・デザインが重視する「顧客が求めていることをきちんと提供していればそこに価値が生まれる」という原理は、ビジネスを行おうとする人であればすべからく持っている原理であり、新しいものではない。

では、どうしていまサービスデザインが注目されているのか?

さまざまな制約によって
上記の素朴な考え方でビジネスを実現することが難しくなっていることによる。
その結果、顧客価値は顧客価値で理解しつつも、実際のビジネスでは「製品をたくさん売る」といったダブルスタンダードがまかり通っている。その前提によって事業モデルが定義づけられ、事業部などの組織が構成され、企業の成長目標や評価指標が定義づけられてきた。

しかし、
ネットの普及や他のテクノロジーの発達によって、より素朴に個別の顧客の要望に応えることが可能となり、実際、それをスピーディに体現してきたスタートアップが数年で業界を席巻してしまう状況が生まれている。こういった流れが、サービス・デザインというムーブメントの原動力になっている。

サービス・デザインの視点に立ち、具体的にこれまでの商慣習や、社内の部門、あるいは事業指標などを見直していく、という所まで着手できている人は少ない。サービス・デザインの遂行に求められていることは、実は個々の手法ではなく、ビジネスのやり方を根本から見直す「発想の転換」「リ・フレーミング」なのである。

サービス・デザインの思考法で顧客視点の体験を紡いでいくと、既存の業界をまたいだ施策や、これまでの組織構造を超えたアプローチなどが求められる状況に直面するだろう。ノキアのケースは、組織でのサービス・デザイン指向の実現の難しさを解き明かしてくれる。


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