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Channel: ひょんなことから国立大学助教授になった加藤雄一郎の奮闘記
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サービス・デザインは、環境づくり。

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良質なカスタマ・エクスペリエンスの提供は、かつてから望ましいとされていた。

しかし、かつてはそれが競争優位を獲得する唯一の方法ではなかった。当時は、マーケティング力で他社を凌ぐことができたし、製品の良さや、市場参入障壁の高さで差をつけることもできた。

いまや、製品間の品質差は小さい。
多くの製品が同程度の品質で同じように機能する。

事態を決定づけるのは、その製品が何を実現するかではなく、どのように実現するかである。「何を(what)」が衛生要因(それが欠けると不満につながるが、あっても満足度は高まらない要因)となった今、顧客に差し出すことができる価値は「どのように(how)」の部分なのである。競争優位をもたらすのは「企業がどのように製品やサービスを提供するか」である。【意見あり2】

スポーツ・ジムを例に考えてみよう。
「安全にウエイトリフティングができる事務を設計する」という方針は、製品主導主義のやり方。そのようなジムはおそらく、必要な設備は何か}」という観点から設計され、最高機種のマシンが並べられ、結果として、強い慣れた顧客にとって申し分のないジムとなる。

しかし、顧客が製品やサービスに対して感じる総合的な価値を決めるのは、ジムのオーナーの視点ではなく、顧客の視点である。多くの顧客にとって、マシンは過酷な試練を貸す装置にしか見えない。「何(what)」よりも、「どのように(how)」が重要になるのである。

ジムを顧客の視点から設計すれば、ジムという「環境」の作り方が変わるはずである。マシンやウエイトの選び方も、各エリアの配置設計も変わるだろう。この視点の変化がもたらす効果は大きい。

競争優位を獲得する鍵は、製品やサービスをどのように提供し、どのような経験を味わってもらう、どうデザインするか、なのである。

デザイン・プロセスは、デザインするべき対象がサービスであっても製品であっても、サービス・デザインと呼ばれる。デザインは、外観を美しく整えるだけの仕事ではない。デザインとは、何かに「形を与える」ことを意味する。無形のアイデアを有形化し、人々が経験できる事物として形作ること。デザインは問題解決の一つの手法であり、そこでは以下の4つの主要な課題に取り組むことが求められる。

1)理解のしやすさ
2)使いやすさ
3)個別性
4)外観の美しさ

デザインとは、一つの反復プロセスであり、実行、評価、改善のサイクルを何回も繰り返さなければ完成に至らない。

サービス・デザインでは、カスタマ・エクスペリエンスを向上させる方法を扱う。顧客が何かを購入するかどうかを検討しはじめた瞬間からスタートし、その購入品のライフ・サイクルが終了するまでの、サービス全体をデザインする方法である。インタラクションのあらゆるポイントを改善すれば、顧客満足度は高くなる。【意見あり3】

出典: サービス・デザイン入門、ビー・エヌ・エヌ新社


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